1 内航海運の現況


(1) 輸送活動の概況

  昭和53年度の内航貨物輸送量は,品目別の輸送動向に格差がみられたものの,セメント,砂利・砂・石材等公共事業関連資材の輸送が年度を通じて好調に推移したのをはじめ,前年度不振であった内航の大宗貨物である鉄鋼等が下半期から順調な伸びを示した結果,総輸送トン数で5億266万トン,総輸送トンキロで2,120億トンキロと前年度に比べそれぞれ7.0%,4.8%の伸びを示した。これは過去の内航海運において最高実績をあげた48年度に対し87%,102%の水準となり,トンキロベースでようやく石油危機前の水準まで回復したこととなる。

(2) 船腹需給と船舶の現状

  53年度の内航船腹の需給状況については,船種別に格差がみられ,内航海運業法に基づき告示された適正船腹量に比べ,一般貨物船は約28万総トン,油送船は約10万総トンの過剰となっている一方,セメント専用船,自動車専用船及び特殊タンク船は需給がほぼバランスしている。
  また,54年3月31現在における内航船舶の総船腹量は, 〔II−(I)−11表〕のとおり11,310隻,384万総トン(塩,原油の二次輸送船等を除く。)である。
  内航船舶は,10年前と比較すると、全船腹に占める木船比率については,43年度末の16%から53年度末の5%へ,船舶の平均船型については,43年度末の205総トンから53年度末340総トン(1.7倍)へ,鋼船における専用船比率については,43年度末の47.6%から53年度末の57.7%へと変化してきており,木船の鋼船化,大型船への代替建造,あるいは物資別適合輸送の方向に沿った専用船の整備等が着実に進展しているといえる。しかしながら,石油危機以降の数年間にわたる内航海運不況によって,内航船の代替建造が進捗せず,全内航船に占める老朽船,不経済船の割合が増大し,船齢構成が悪化する傾向がみられる。

(3) 内航海運事業者の現状

  53年3月31日現在の内航海運事業者数は, 〔II−(I)−12表〕のとおり,11,349事業者で,その内訳は許可事業者7,916,届出事業者3,433となっている。内航海運事業者のうち許可事業者の事業規模の実態をみると,資本金1億円以下の会社と個人経営の占める比率は,全業種で95.0%,内航運送業では82.4%,内航船舶貸渡業で97.9%,内航運送取扱業(専業者に限る。)では88.7%に達しており,また,内航運送業では,その使用する船腹量が1,000総トン未満の事業者が40.9%を占め,内航船舶貸渡業者の平均所有隻数は1.2隻となっている。

  これらの内航海運事業者の経営状況をみると,経常損益で赤字に転落し,累積欠損金の増大により経営が一挙に悪化した50年度から徐々に立ち直りつつあり,53年度についても,景気の回復に伴い輸送量が順調に増大していること等から,その経営内容は52年度よりも改善される傾向にある。しかしながら,長期の不況により未だ多くの内航海運企業が累積欠損金を抱えていること,54年に入り燃料油価格が大幅に上昇する等のコストアップ要因があること等から企業経営は依然として苦しい状況となっており,この傾向は特に船舶貸渡業者や安定的荷主を確保していない運送業者に強いものとなっている。
  また,世界的な石油需給の逼迫のあおりを受けて,最近,内航海運においても燃料油の価格の上昇,入手難等の問題が生じつつあるが,かかる事態に適切に対処し安定した価格の燃料油の供給を確保するとともに,今後の長期的な石油の供給制約に対処するため,内航海運における省エネルギー船の開発,普及等のハード面,運航効率の向上等のソフト面にわたる省エネルギー対策を推進していく必要がある。


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