3 長距離フェリーの現状と今後


  長距離フェリーとは,片道の航路距離が300キロメートル以上の陸上輸送のバイパス的な旅客フェリーをいう。長距離フェリー事業は,43年における開設以来48年までは目ざましい発展を示してきたが,49年以後石油危機を契機に生じた人件費,燃料費をはじめ諸経費の急騰と景気の後退により大転換を余儀なくされ,事業の集約,航路の再編,使用船舶の変更等が行われた。しかしながら,最近においては,景気の緩やかな回復に伴うトラック輸送の需要増等に支えられて,全体としては経営改善への途をたどりはじめている。53年度においては,乗用車の航送量は,台数で前年度比4.5%減,台キロで前年度比4.9%減と51年度以来再び減少の傾向をみせたが,同様に旅客輸送量も人員で前年度比5.2%減,人キロで前年度比5.1%減と51年度以来再び減少の傾向をみせた。他方,トラックの航送量は,台数で前年度比1.6%増,台キロで4.8%増となり,50年度以来引き続き増加している 〔II−(I)−20表〕

  52年度以降回復の兆しをみせていた長距離フェリーの収支は,53年度に至り,さらに好転し,49年度以来はじめて,経常損益で黒字を計上した。53年度における長距離フェリー事業者12社の収支状況をみると 〔II−(I)−21表〕のとおり,98億1,200万円の営業利益及び15億3,000万円の経常利益を計上し,収支率も102.0%にまで回復している。しかしながら,依然として,ほとんどの事業者が累積欠損を抱え,その総額は,53年度末で約509億円に達している。また,最近における国際的な石油事情を背景に燃料油価格が高騰しつつあるほか,金利の上昇の動きもあり,今後の長距離フェリーをとりまく経営環境は非常に厳しいものが予想される。

  長距離フェリーは輸送,荷役時間の短縮,荷傷みの減少,交通事故,交通公害の防止等の長所をいかして物流近代化の一翼を担っており,今後とも海路利用の積極的拡大発展に寄与していくことが望まれる。


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