1 港湾運送事業の現状


(1) 港湾運送量

  昭和53年度の全国97港の指定港湾(港湾運送事業法の適用対象港湾)における港湾運送量は, 〔II−(III)−17表〕に示すとおりである。港湾運送の中核である船内荷役についてみると,前年に比較して全国では3.0%,5大港では6.8%の増加となっているが,この増加は主としてコンテナ荷役量の伸びによるものであり,コンテナを除いた船内荷役量は横ばいである 〔II−(III)−18表〕。更に,コンテナ荷役,サイロ荷役,その他の大型機械荷役等を除いた,いわゆる在来荷役について見ると,53年は52年に比べ4.7%の減少(全国船内荷役協会調べ)となっている。

(2) 港湾運送事業者

  53年度末の港湾運送事業(検数,鑑定,検量事業を除く。)の免許数及び事業者数は, 〔II−(III)−19表〕に示すとおりであり,前年度末に比べ免許数で20免許,純事業者数で9事業者減少している。また,港湾運送事業者の約8割が資本金1億円未満の中小企業者である。

(3) 港湾運送料金

  人件費をはじめとする諸経費の上昇に対応するため,54年5月港湾運送料金の改定が行われた。改定幅は,船内荷役料金9.8%,はしけ運送料金6.0%,沿岸荷役料金6.9%であり,その他の港湾運送料金も含め,港湾運送事業全体では8.1%となっている。

(4) 港湾運送用施設

  52年度末の港湾運送用施設の保有状況は, 〔II−(III)−20表〕に示すとおりである。はしけ船腹量が前年に比べ約2割減少しているが,これは主として右2年度に港運業界が5大港において約36万D/Wトンのはしけを買上げ,廃棄したことによるものである。

  港湾運送用の荷役機械及び上屋の整備については,政府関係金融機関及び(財)港湾運送近代化基金(港湾運送事業者の拠出金をプールし,その資金を活用して港湾運送の近代化を助成する機関)による融資が行われている。53年度の融資実績は,日本開発銀行31億5,000万円,中小企業金融公庫34億5,300万円,北海道東北開発公庫23億5,500万円,(財)港湾運送近代化基金16億4,400万円となっている。

(5) 港湾労働

  港湾運送に従事する常用労働者は,53年度末において全国で約86,300人である。5大港における船内,はしけ,沿岸の各労働者の実数及び就労延数は, 〔II−(III)−21表〕に示すとおりであり,荷役の合理化,機械化により,近年減少傾向にある。特に53年の神戸港における船内労働者の就労状況は悪く,常用労働者の就労延数を前年同月と比較すると,53年7月が88.0%,8月が89.5%,9月が86.6%と大幅に落ち込んでいる(労働省調べ)。このような港湾労働をめぐる環境の変化に対応するため,51年7月から港湾労働対策全般の見直しが港湾調整審議会(総理府に設置)において進められている。なお,54年6月には,登録日雇港湾労働者の就労日数の減少による雇用調整手当の収支の悪化に対処するため,同審議会の建議を受けて,登録日雇港湾労働者を雇用保険法の適用対象者とするための港湾労働法の一部改正が行われた。
  また,54年5月には,事業者団体と労働組合との間で,港湾労働者の雇用と生活の安定のため基金制度を設けること等を内容とする協定が締結され,現在労使により具体的内容の詰めが行われている。


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