2 在来荷役の不況対策


  従来,港湾運送事業の運営は,経済の高度成長下において増大する港湾取扱貨物を迅速に処理するため,荷役能力の拡充に重点をおいて進められてきた。特に40年代半ば以降は,コンテナ荷役,サイロ荷役等輸送革新の進展に対応し,高度に機械化した荷役方式の整備が図られており,この結果港湾荷役は,いわゆる在来荷役と輸送革新に対応した大型機械による荷役に大きく分化してきている。このうち在来荷役の分野は,経済の低成長等に伴う港湾取扱貨物量の伸びの鈍化と輸送革新の進展等により,荷役量が前述のように減少傾向にあり,経営状態が悪化している。
  在来荷役の中でもはしけ運送量の減少は著しいが,これに対し政府としては,はしけ建造の抑制及び過剰船腹の削減を推進してきており,また,中小企業事業転換対策臨時措置法,特定不況業種離職者臨時措置法及び雇用保険法(事業転換等雇用調整事業)の対象業種としてはしけ運送事業を指定するなど諸般の施策を講じているところである。一方,港運業界においても,52年度に約36万D/Wトンのはしけの買上廃棄を行っており,また,5大港を中心として共同配船や元請,下請事業者間のグループ化が実施又は検討されるなど,不況対策が進められている。また,在来の船内荷役の分野においても,荷役量の減少により就労状況の悪化と事業経営の不振が見られるところであり,雇用の安定を図りつつ事業の健全な経営を確保することが重要な課題となっている。なお,船内荷役事業においても,労働者を運ぶ通船の共同運航が一部で行われており,事業の共同化の動きが見受けられる。


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