3 プレジャーボートの安全対策


  生活水準の向上,週休2日制の普及,余暇利用に対する意識高揚等により,モーターボート,ヨット等のプレジャーボートを利用する海洋レクリェーションは次第に国民の間に定着しつつあり,これに伴って要救助プレジャーボートの隻数も逐年大幅な増加を示してきている。そして,こうした状況を反映して,最近,要救助プレジャーボートの隻数及び死亡・行方不明者数は,逐年大幅な増加を示している。
  その他,モーターボートが高速で遊走し,海水浴客や潜水者を死傷させ,漁網,漁業標識等を破損したり,あるいは航路筋で一般船舶の航行を妨害するなどの事例もあり,一部のプレジャーボート運航者のルール無視とマナーの欠如が関係者から指摘されているところである。
  このような状況にかんがみ,海上保安庁としては,49年以来プレジャーボート等小型船舶に対する安全指導を重点項目としてとらえ,関係者を対象とした講習会を積極的に開催するとともに,小型船舶の安全指導の徹底と取締体制の強化のため,小型高速監視取締艇の整備に努めている。
  更に,安全で秩序ある海洋レクリェーションの発展を促すためには,プレジャーボート関係者相互の自主的な安全指導,啓もう活動が必要不可欠であるという認識に立ち,プレジャーボート等小型船舶の航行安全対策の強化と秩序ある海洋レクリェーションの確立に寄与するため,49年5月,ユーザー等民間有志による自主的なパトロール等の安全活動を積極的に援助,育成することとし,海上安全指導員制度を発足させ,53年度末現在1,080人の海上安全指導員及び498隻の安全パトロール艇を指定している。また,これら海上安全指導員の活動をより組織的に行うため,各地で小型船交通安全協会等の設立が推進され,53年度末現在2社団法人及び36任意団体が設立されている。
  また,小型船舶(総トン数20トン未満のもの)に対する船舶職員の乗り組み等について一層周知徹底を図るとともに,小型船舶操縦士試験の実施体制を整備し,日本船舶職員養成協会等の民間養成機関に対する指導等を行っている。
  構造,設備の面からは安全基準の整備,強化に努めるとともに,小型船舶の検査を統一的に実施している小型船舶検査機構に対しても実施体制の強化等を図るべく53年度において3,000万円の政府出資が行われた。


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