3 DC-10型機事故の影響
54年5月26日午前5時頃(アメリカ現地時間5月25日午後3時)シカゴ,オヘア空港外においてアメリカン航空所有のDC-10型機の墜落事故が発生し,事故原因の調査が行われ,左主翼に取り付けられているエンジンの脱落が事故の直接原因であることが判明した。FAA(米連邦航空局)ではこれを受けて耐空性改善命令によりエンジンの懸架装置(パイロン)の特別点検をDC-10型機の全運航者に対し指示したが,点検の結果,さらに他のDC-10型機2機でパイロン部に亀裂が発見されるに至って,6月6日,FAAはDC-10型機の型式証明の効力を時停止させ,その飛行停止を指示した。
我が国運輸省ではこうした米国における措置に対応して6月6日,日本航空に対し同社所有のDC-10型機9機の飛行停止を指示するとともに,外交ルートを通じ外国航空会社に対してもDC-10型機の我が国への乗り入れを中止するよう要請する一方,6月14日調査団をアメリカに派遣し,FAAなどからの情報収集及び分析にあたらせた。
こうした中で欧州におけるDC-10型機の運航各国は,6月19日,パイロンの特別な整備点検を条件に運航再開を決定し,これに引き続きアジア地区のDC-10型機運航各社も6月20日に運航を再開した。
我が国運輸省では調査団の収集した資料の検討結果及び再度アメリカに派遣した調査官からの情報をもとに,7月10日耐空性改善通報を発出し,航空局検査官立ち会いのもとに日本航空所有のDC-10型機9機のパイロン部等の詳細な特別点検を実施させ,異常のないことを確認のうえ,7月11日,パイロン部等の繰り返し点検を条件に,日本航空に対し,DC-10型機の運航再開を認め,これを通知するとともに外国航空会社に対してもDC-10型機の我が国への乗り入れ再開を認めた。
なおアメリカにおいても,7月13日(アメリカ時間)FAAは型式証明の効力を復活させ運航再開を認めた。
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