2 日本をめぐる問題
(1) 我が国と諸外国との航空交渉
ア 航空協定締結交渉
我が国の航空旅客市場としての価値の増大に伴い,我が国との定期航空路線開設のための航空協定の締結を希望する国は極めて多く,現在33か国にのぼっている。もとより航空協定の締結及び定期航空路線の開設は両国の友好関係と相互交流を促進するものであり,適切な定期航空路線の開設には積極的に対応していくことが望ましいが,現在の我が国の空港事情等からみて協定締結を希望するすべての国と協定を締結するのは困難な状況にある。東京国際空港の狭隘化に対処するため78年5月に新東京国際空港が開港したが,新東京国際空港も燃料の制約等により未だその機能を十分に発揮できる状態にない。従って,各国から寄せられている新規乗入れの希望には,まだ,必ずしも十分に応じられうる体制にはないが,空港事情のほか,両国間の政治,経済,文化等の交流関係,両国間の直行需要見通し,相手国のハイジャック防止三条約加盟状況等を考慮しつつ,交渉を行うこととしている。最近においては,78年12月,79年6月及び8月にフィンランドと,79年1月及び7月にバングラデシュと,79年4月及び9月にスペインと,それぞれ協定締結交渉を行った。
イ 日米航空問題
日米航空協定については,締結当初より基本的な不均衡が存在するとして,数次にわたり交渉を行ってきた。この結果,我が国は路線権として,59年にロサンゼルス乗入れ権を,65年にニューヨーク経由世界一周縁を,69年に大圏コースニューヨーク線及びサイパン経由グアム線を獲得したが,その都度既得路線権の放棄,アメリカチャーター専門企業の乗入れを認める等の代償を払ってきており,未だ基本的な不均衡の是正は十分行われていない。
76年10月,我が国は現行の日米航空協定に存する日米間の権益の不均衡を抜本的に是正するため,「日米航空交渉を開始し,78年3月まで6回にわたって交渉を行った。現行の日米航空協定において我が国にとって不利益となっているのは,主として以下の3点である。@乗入れ地点については,国土の広さとの関係から米国企業は日米間航空需要のほとんどすべての輸送に参加しうるのに対し,日本企業の参加は限定されており,アメリカ中西部,南部等の重要市場に乗入れ地点を有していない。A以遠権については,アメリカが日本以遠無制限の権利を有しているのに対し,日本はニューヨーク以遠欧州のほか,運輸権の制限された中南米への権益しか与えられていない。B輸送力については,原則として企業が自由に決定できることとなっているため,数多くの強大な企業を有するアメリカに有利となっている。これまでの交渉で日本側は,上記の不均衡の是正を求めてきたが,アメリカ側はチャーターの自由化,低運賃の急速な導入を求めており,交渉は78年3月以来中断したままになっている。
ウ その他の航空交渉
上記のほか,すでに協定締結ずみの国との間でも,新路線の開設,増便,機材大型化等をめぐって頻繁に交渉を行っている。しかし,新規協定締結交渉の場合と同様,燃料,空港事情等の制約から,多くの場合これらの交渉は難航している。
(2) チャーター輸送の進展
我が国発着のチャーター便は旅客,貨物合わせて昭和53年度で約4.700便であり,ここ数年間はほぼ頭打ちの状態にある。
チャーター便の運航が盛んな北大西洋市場においては旅客輸送について1977年には輸送人員の21%に,またヨーロッパ地域内市場では,同じく42%に達している。欧米におけるチャーターは,北部欧州諸国から地中海へのバカンス輸送,欧米間の里帰り輸送等を基盤とし,特定団体の会員にのみ認められるアフィニティ(affinity)チャーター,旅行代理店が地上部分も含めた包括的旅行サービスの旅客を公募し,自ら用機者となって行う包括旅行(inclusive tour)チャーター等を中心として,発達してきたが,近年に至り,アメリカのチャーター規則の自由化が進められた結果,ほとんど規制がなく,誰でも,予約なしに利用できるパブリックチャーターが導入され,定期便とチャーター便の区別が明確でなくなった。
我が国においては,定期便を航空運送の基盤とし,チャーターはそれを補完するものであるとの基本政策をとっており,アメリカのようなチャーターの徹底した自由化は定期便との区別をなくし,その存在を脅かすものであるので,一定の条件の下でチャーターを認める政策をとっている。
従って,我が国では,特定の個人または法人がチャーター契約を締結し,チャーター料金の全額を負担するオウンユース(own use)チャーター及び類縁団体によるアフィニティチャーターしか認めてこなかったが,最近の海外旅行市場の特殊性(観光を自的とした団体旅行が多い。)を考慮し,消費者の需要の高まりに対応して,昭和53年11月から55年3月31日までの期限付きで包括旅行チャーター(ITC)を書式験的に認めることとした。このように,時代の要請に対応しつつ,定期便による輸送とチャーター便による輸送との調和ある発展を図り,適正な輸送秩序を確保していくことが重要な課題となってきている。
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