6 観光の分野における国際協力
(1) 観光関係国際機関に対する協力
我が国は,観光の分野における国際協力に応分の貢献を行い,観光施策の推進に資するため,53年7月,世界観光機関(WTO)に加盟した。我が国は,WTOの活動に積極的に参加することにより,我が国の観光政策を推進していくうえで貴重な参考資料を得るとともに,発展途上国に対する観光開発や観光資源保護に関する技術協力等を積極的に推進する態勢の確立に努めている。
また,経済協力開発機構(OECD),国際連合アジア・太平洋経済社会委員会(ESCAP)'の行う観光関係活動に参加するとともに,太平洋観光協会(PATA),東アジア観光協会(EATA)等を通じて共同観光宣伝,地域内協力活動等を行っている。
(2) 発展途上国に対する協力
近年,発展途上国において国際観光の振興が外貨獲得の有効な一手段であり,また雇用機会を増大させ波及的に他の産業の発展にも効果のある重要な課題であるとの認識が高まってきているため,先進各国に対し観光開発等に係る協力要請が増加している。
このような要請に対して我が国は次のような協力を行っている。
ア ASEAN貿易投資観光促進センター(仮称)の設立
東南アジアにおける地域協力の一環として,従来,東南アジア貿易投資観光促進センター(SEAPCENTRE)が設置されてきたが,貿易観光常設展示場の開設を含めその機能を大幅に拡充するため,新機構の設立が日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)との間で協議されている。54年5月には「ASEAN貿易投資観光促進暫定センターの設立に関する協定」が締結されたが,今後,本センターの設立に向けてさらに協議を進めることとなっている。
イ 観光開発調査への協力
タイ国政府及びインドネシア国政府の要請に基づき,次のような観光開発計画調査を行った。タイ国については,パタヤ地区観光開発計画に関し,51年度の事前調査,52年度のマスタープランの策定に引き続き53年度は基盤施設に関するフィージビリティ調査を実施した。インドネシア国については,48年度より実施した中部ジャワ観光開発計画のうち中心的な観光地であるボロブドール・プランバナン国立史跡公園整備計画について,53年度は規模の変更等を内容とするマスタープランのフィージビリティ調査を実施した。
ウ 研修員の受入れ
政府ベースの技術協力の一環として,52年度に引き続き53年4月及び10月の2回にわたり,2か月間の観光セミナーを開催し,アジア・太平洋,中近東地域等の開発途上国23か国から24名の政府関係観光機関等の職員を受入れ集団研修を実施した。このほか個別研修として,韓国他2か国の政府職員7名に対し,観光行政等に関する研修を実施した。
エ 資金協力等
観光関係の資金協力としては,ブルガリアのソフィア及びバングラデシュのダッカにおけるホテル建設に対し,海外経済協力基金より円借款の供与が行われた。また,ホテル部門を中心として民間による海外投資も行われており,54年1月現在,わが国企業による海外へのホテル事業の進出は56軒(20,874室)に達している。
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