1 技術協力


(1) 技術協力

  発展途上国に対する政府間ベースの技術協力は,原則として一元的に国際協力事業団(JICA)を通じて実施されており,研修員受入れ,専門家派遣,機材供与,開発調査事業,開発協力事業,プロジェクト方式技術協力等で構成されている。
  研修員の受入れは,受入れ方式により集団研修と個別研修とに分けられるが,集団研修は,実施時期,研修内容,人員等があらかじめ定められていて,発展途上国から応募してきた研修員に対して実施されるものであり,運輸関係では,54年度の実績は, 〔1−8−1表〕にあるように19コース,232人に対し実施した。なお,個別研修は34件,延べ115人に対し実施した。

  開発調査事業(発展途上国からの地域総合開発,社会開発に係る協力要請に基づき開発計画の作成,フィージビリティーの確認等を行うもの)の54年度の実績は 〔1−8−2図〕のとおりである。

  プロジェクト方式技術協力は,海外技術協力センター事業,農林業協力事業,保健医療協力事業,人口家族計画協力事業,産業開発協力事業に大別される。そのうち,技術協力センター事業は,発展途上国の経済社会開発にとって最も不足している技術者の訓練,養成及び機材の供与をあわせて行うことを目的として,技能訓練機関等において技術移転を行うものであり,運輸関係では現在マレーシアの船舶機関士養成,エジプトのアラブ海運大学校に対する協力を実施している。

(2) 運輸プロジェクトの推進

  上記の国際協力事業団を通ずる技術協力のほか,運輸省は,財団法人国際開発センター(IDC)に委託して運輸経済調査を46年度から実施しており,また,社団法人海外運輸コンサルタンツ協会(JTCA)が行っている海外情報収集調査には48年度より国庫補助を行っている。
  IDCが行う調査は,発展途上国の港湾,鉄道,空港及び道路等の運輸関係基盤施設の整備状況及び整備計画並びに交通事情等の基礎調査であり,今後の発展途上国からの運輸プロジェクトに対する協力要請に適切に対応できるように基礎的な資料の収集及びその分析を行うものである。54年度には,ブラジル,ウルグアイについて予備調査を,バングラデシュ,スリ・ランカ,ネパールについては53年度の予備調査に引き続いて本調査を実施した。
  JTCAが実施している調査は発展途上国における運輸関係プロジェクトの発掘等を目的とした情報収集であり,54年度には東南アジア,中近東アフリカ,中南米の各地域の19カ国に延べ11チームを派遣した。なお,JTCAでは技術協力の担い手であるコンサルタントの育成強化のため,各種の研修コースを設けているが,これに対しても国庫補助が行われている。また,我が国の優秀な運輸関係技術を発展途上国に紹介するために,映画を作成して海外広報活動を行っている。
  更に,上記の施策のほか,発展途上国の運輸関係プロジェクトの推進のため,発展途上国の上級管理者を招へいし,我が国の優秀な運輸関係技術を視察させるとともに意見交換を行っており,54年度にはブラジルのレゼンデ運輸大臣を招へいした。レゼンデ運輸大臣は,懸案事項であるプライアモーレ港建設計画に対する円借款のツバロン港改修計画等への転用問題,鉄鋼鉄道計画等に関し,今後の協力の進め方について運輸大臣をはじめとする関係者と協議を行うとともに,我が国の運輸施設を視察した。


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