2 国際輸送


  この10年間に,日本人の海外旅行は飛躍的に増大し,男も女も,老いも若きも自由に海外に旅行する,いわば海外旅行の大衆化時代に入った。また,我が国が,経済や政治の分野で国際的に重要な地位を占めるに伴い,我が国をめぐる国際交流はますます活発となっている。
  我が国の出入国者数の推移を示したのが 〔2−1−21図〕である。昭和54年の入国外客数は111万人,出国日本人数は404万人で,10年前に比べそれぞれ約1.8倍,8.2倍に増大した。特に,46年度に入国外客数を出国日本人数が上まわって以来,出国日本人数は48年から50年に若干の伸びの停滞をみせたものの,年平均伸び率23.4%の驚異的な伸びを示している。日本人の海外旅行の目的の8割以上は観光であるが,日本企業の海外進出や貿易取引の活発化等による業務目的の海外旅行者も堅調に伸びている。

  我が国の海外旅行者を男女別,年令階層別にみると,第1に,女性の旅行者の増加が目立っている。すなわち,女性は44年10万4,000人(全体の21.2%)であったが,54年では112万3,000人(同27.8%)になった。第2に,30才未満の若年層の旅行者が増加した。44年には13万4,000人(全体の27.3%)であったが,54年には118万8,000人(同29.4%)になった。
  このような旅行者の増加傾向の背景として,国民の所得水準の向上,日本人の海外関心の高さ等のほか,外貨持出制限の緩和,団体割引運賃の導入によるいわゆるパック旅行の普及が指摘される。
  なお,海外旅行の形態も,いわゆるパック旅行の割合が増えてきている。また,海外旅行者1人当たりの海外における消費額も約1,200ドル(54年)になっており,10年前の約490ドルに比べ約2.4倍になっている。
  次に,入国外客数は,日本万国博覧会の開催の翌年の46年,第1次石油危機後の49年及び円高ドル安の影響を受けた53年を除いて順調に推移してきた。しかし,我が国にとっては活発な国際交流による国際協調が極めて重要であり,国際的な相互交流の促進の見地からみても,他の先進諸国や周辺諸国と比べても受入外客数が少ない状況である。
  これら出入国者のほとんどが航空機を利用している。
  我が国航空企業の国際線輸送量は54年度230億人キロで,44年度に比べ約3.8倍,年平均14.3%の伸長を示しており,世界の航空旅客輸送に占める分担率は54年度5.0%に伸長してきている。また,我が国航空企業の積取比率(54年度)をみると,我が国出入国旅客全体については37.8%となっており,また,日本人旅客については42.7%となっている。
  今後とも,国際化の進展と国際社会における我が国の役割の増大により,諸外国との相互理解及び国際親善の必要性はますます高まりつつあり,外国人観光旅行者の誘致のための海外宣伝活動,日本人海外旅行者対策等,国際観光対策の充実とともに国際空港の整備を急ぐ一方,国際航空輸送の変化に対応して,我が国航空企業の健全な発展を図っていく必要があろう。


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