6 我が国造船業の課題と展望
48年の第1次石油危機以降の海運市況の低迷等により,長期にわたる不況に苦しんできた我が国造船業も,54年度には,新造船受注量が6年ぶりに増加に転じる等,ようやく立直りの兆しが見えるようになった。
今後の造船市況の動向については,不安定なエネルギー情勢,世界経済の成長鈍化等により,まだ当分の間低迷状態が続くものと思われるが,長期的にみれば,世界貿易は今後とも拡大が見込まれることに加え,現在の世界の船舶建造量はその船隊規模に比して過少であり,今後紆余曲折を経つつも徐々に回復してゆくものと考えられる。
我が国の造船業は,今回の不況に対処して,過剰造船設備の処理,不況カルテル等を実施し,縮小均衡による不況の克服を図ってきたわけであるが,一応市況が底を脱したとみられるものの,まだ,当分続くと見込まれる需給不均衡下の不安定な市場の中で,まず第一に不況により打撃を受けた企業体力の強化という課題に取り組んで行く必要があるものと思われる。
また,長期的にみれば,我が国造船業は,既存の西欧造船諸国との協調,低廉な労働力を武器に台頭しつつあるいわゆる第三造船国との競争,更に,高度化する我が国の産業構造の中で,労働集約型産業としての色彩の濃い造船業をいかに魅力のあるものに変革していくか等基本的な課題に取り組む必要がある。今後,LNG船,省エネルギー船等の高付加価値船の建造促進,建造技術の一層の改善,合理化,造船技術の多角的応用等により,体質の高度化を図りつつ,これらの課題の解決に努めていく必要があろう。
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