1 国内航空輸送の順調な増大


  昭和44年度から54年度までの国内航空旅客輸送量の推移を示したのが, 〔2−4−1図〕及び 〔2−4−2図〕である。この10年間で,輸送人員は,44年度1,200万人から54年度4,100万人と約3.4倍に伸び,また,輸送人キロは,44年度71億人キロから54年度302億人キロと約4.3倍に拡大した。現在,国民約5人に2人が平均740キロメートルの国内航空の旅を行っている計算になる。この間の推移の状況を輸送人員で見ると,雫石事故の影響を受けた46年度の一時的な落込みと,48年の石油危機の影響による49年度,50年度の停滞はあったものの,全体的には年平均10%を超える堅調な伸びが続いている。同期間中の国内旅客総輸送量の伸びは,輸送人員で約1.27倍,輸送人キロで約1.32倍であるから,航空需要は,全体需要の伸びに比し2倍以上の倍率で急速に伸長していることがわかる。これを輸送機関別に見ても,航空は全体にシェアを拡大しており,とりわけ中・長距離の分野においてめざましい進出を示し,1,000キロメートル以上の距離帯では,46年度に鉄道に次いで36.8%であったシェアが53年度には68.2%と拡大し,鉄道に代わってこの分野での代表的な国民の足としての地位を確立するに至っている。こうした国内航空旅客輸送量の推移を幹線(札幌,東京,大阪,福岡,那覇を相互に結ぶ路線),ローカル線別に見ると,幹線は年平均10%弱の伸びにとどまっているのに対し,44年度に旅客数で初めて幹線を上まわったローカル線は,その後も年平均15%を超える順調な伸びを示している。

  一方,この間の路線網の拡大については,44年4月に93路線であったものが,47年の沖縄復帰に伴う沖縄関係路線の国内線化,日本近距離航空の設立(49年)に伴う離島路線の拡大,その後のローカル線を中心とした路線網の整備・拡充等により,55年3月末現在で160路線に増加している。
  また,路線距離でみても,44年4月には3万5,000キロメートルであったものが,55年4月現在で7万7,000キロメートルに達している。
  以上のような国内航空旅客輸送の増大は,もちろん空港整備の進展による航空ネットワークの拡大やジェット化・大型化による輸送力の増強等によって航空機を利用しうる条件が整えられ,潜在需要の顕在化への途が開かれてきたことに大きく依存しているであろう。しかしながら,それは基本的には,他の追随を許さない高速性(新幹線と比較してプロペラ機で3倍,ジェット機で5倍),快適性(乗り心地のよさ,きめ細かな乗客サービス等),利便性(乗り換えなしの目的地への直行等)といった航空サービスの特性が,ここ10年における広汎なジェット化,機材の大型化,安全システムの整備等の進展を通じ一層その水準を高める一方,これと並行して,社会的な時間価値の増大,生活水準の向上によるサービスの高級化指向,所得水準の向上による航空運賃負担の軽減化等の変化が進んだ結果,利用者の航空輸送への選好が高まったためと考えられる。
  一方,国内航空貨物輸送量は 〔2−4−3図〕のとおり,44年度には,8万4,000トンであった輸送量が,50年度には16万5,000トンと2倍弱,54年度には28万9,000トンと3倍強となり,49年度に石油危機の影響による輸送量の減少がみられたものの,年平均13.7%の大幅な伸びを示し,航空貨物輸送は,輸送手段として確固たる地位を占めるに至った。


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