3 運賃


  国鉄の基本的な運賃は,従来,法律により定められていたが,このような制度下においては,適時適切な運賃改定が困難であり,それが国鉄の財政悪化をまねいた原因の一つになっていた。また,近時,他の輸送機関の発達により,国鉄のシニアは著しく低下してきており,このような状況下で国鉄が企業的経営を行うためには,きめの細かい運賃改定を行うことが必要となってきた。
  このため,52年12月,運賃決定方式を弾力化することを内容とする国有鉄道運賃法の一部改正が行われ,これにより国鉄は,改定による増収見込額が実施年度の経費増加見込額の範囲内であれば,運輸大臣の認可を受けて運賃改定を行うことができることになった。
  また,54年12月29日に閣議了解された「日本国有鉄道の再建について」において,国鉄の運賃改定に関する基本的な考え方が明らかにされ,運賃については,輸送需要の動向,他の輸送機関との競合関係等を考慮しつつ,国鉄の主体的な経営判断のもとにきめ細かな工夫を凝らし,法定限度の範囲内において,国鉄の収支状況及び物価動向にも配慮しながら,適時適切に改定を行うこととされた。
  このような基本的方針に基づいて,55年2月8日に国鉄から運賃改定申請が提出された。この申請は,55年4月20日から旅客運賃を平均4.7%,貨物運賃を平均8.9%引き上げることにより,1,038億円の増収を図ろうとするものであった。
  主な改定申請の内容は,
 (1) 普通旅客運賃を平均5.5%引き上げる。ただし,最低運賃は据え置く。
 (2) 特急,急行料金を100円ずつ引き上げる。ただし,在来線の100キロまでの料金及び新幹線特急料金は据え置く。
 (3) 通勤定期旅客運賃は,普通旅客運賃の改定を反映して,平均52%引き上げる。
 (4) 通学定期旅客運賃は,割引率を平均3.0%引き下げ,基本賃率引き上げ分と合わせて平均18.9%引き上げる。
 (5) 車扱貨物運賃については,等級制度を廃止したうえで,平均8.9%引き上げる。
 (6) コンテナ貨物運賃を平均6.7%引き上げる。というものであった。
  運輸省は,この申請を受けて,運輸審議会,物価問題関係閣僚会議等に諮り,55年4月11日,通学定期の割引率の引き下げを1.5%にとどめ,平均11.5%の引き上げとするという修正を加えて認可した。
  これにより,55年度は1,005億円(増収率4.2%)の増収が見込まれている。
  今回の改定については,車扱貨物運賃について貨物等級制度の廃止が実現したことにより,貨物の運賃負担力に応じた従来の制度から輸送コストを基礎とした運賃制度に転換したことが特記される。


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