4 労働問題


  国鉄における労働組合の組織状況は 〔I−(I)−8表〕のとおりであり,全職員約41万9,500人のうち,組合加入者は35万人である。

  55年春闘に際しては,国鉄の各組合は,賃金引き上げ(国労は組合員1人平均月額2万3,000円,動労は35歳の組合員について2万1,500円,鉄労は8%(約1万5,000円),全施労は35〜39歳の標準労働者について1万8,600円,全動労は1人平均2万6,000円)の要求を国鉄当局に提出するとともに,国労,動労及び全動労は物価値上げ反対,「国鉄再建法」反対,地方交通線廃止反対,運賃値上げ抗議等を掲げ,争議行為を行った。これに対し,当局側は,4月11日に,組合員1人平均3,972円の有額回答を行ったが,組合側が不満としたため,同月12日に国鉄当局及び鉄労からの申請に基づき,公労委の調停に係属した。
  組合側の計画していた4月16日からの72時間ストを回避すべく,引き続き折衝が重ねられたが,調停がまとまらないまま組合側はストに突入した。公労委による調停作業は,その後も難航し,16日午後公労協共闘委員会が公労委労働側委員の辞任を発表する事態となり,調停作業は時中断した。一方,組合側は同日夕刻にスト中止指令を出し,同日夜になって運転が再開された。
  その後,公労委の調停作業は,5月13日になって再開され,14日に調停委員長見解が示されたが,労使双方の同意が得られず,調停は不調となり,仲裁移行が決定された。
  6月10日,調停委員長見解どおり,3.08%プラス2,280円,組合員1人平場8,009円の仲裁裁定が下された。
  この仲裁裁定の取扱いについては,7月15日の閣議了解において「日本国有鉄道経営再建促進特別措置法案が前国会において審議未了となっており,同法案が未成立の現段階においては,その実施は予算上可能であるとは断定できない」として,公共企業体等労働関係法第16条第2項の規定に基づき,議決案件として国会に付議することが決定された。同案件は,日本国有鉄道経営再建促進特別措置法案とともに第92回特別国会に提出され,同法案とともに継続審議とされたが,第93回臨時国会において承認の議決がなされ,仲裁裁定は実施された。
  55年春闘による影響は,旅客列車1万4,186本,貨物列車4,545本の運休となり,影響人員は約1,700万人に及んだ。
  三公社五現業等の経営のあり方等と労働基本権問題について検討するために内閣に設けられた公共企業体等基本問題会議から,53年6月19日に提出された意見書について,政府部内で検討した結果が公共企業体等関係閣僚会議事務局により取りまとめられ,55年6月6日の閣僚懇談会に報告された。報告書は,国鉄の経営形態に関しては,54年12月29日の「日本国有鉄道の再建について」の閣議了解及び日本国有鉄道経営再建促進特別措置法案による国鉄の経営の重点化,地方交通線のバス輸送等への転換,要員の合理化等の新たな国鉄再建対策が現実に即して意見書の趣旨を実現する施策であるとしているほか,違法な争議行為の抑制措置に関しては,争議組合に対し損害賠償請求する基本姿勢で対処すべきこと,スト参加組合員の賃金カットを行うべきこと等を報告している。


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