1 自動車損害賠償保障制度


  自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」という。)は,自動車による人身事故の被害者に対する損害賠償の確保を目的とする強制保険である。その運営には,国内20社,外国27社,合計47社(54年度末現在)の損害保険会社が保険者となってあたっており,自動車の保有者等がこれと自賠責保険契約を締結し,事故率に応じて車種等の区分に従って定まっている保険料を支払うことにより,事故により支払った損害賠償金のてん補を受けることとなっている。この場合,被害者の保険会社に対する直接請求制度,保険金支払,保険経理につき国の関与を確保するための政府の再保険制度等が設けられており,公共的性格の強い保険として被害者の保護の増進に大きな役割を果たしている。
  自賠責保険の場合,その保険金支払限度額が政令で定められており,53年7月1日より,死亡2,000万円,傷害120万円,後遺障害2,000万円(1級)〜75万円(14級)となっている。また,被害者の当座の資金として支払われる仮渡金の金額は,死亡160万円,傷害40万円〜5万円となっている。
  なお,農業協同組合が行う自動車損害賠償責任共済(以下「自賠責共済」という。)に加入している自動車は,自賠責保険に加入しなくても運行の用に供することができることとなっているが,自賠責共済のしくみ等については,自賠責保険のそれとほぼ同様である。
  更に,ひき逃げや無保険の自動車による事故の複害者については上述の自賠責保険や自賠責共済による損害のてん補が行われないので,これを救済するために,運輸省は,自動車損害賠償保障事業を行っている。自動車損害賠償保障事業は,再保険事業からの繰入,保険会社に対する賦課金等を財源として加害者に代って損害のてん補を行い,その後加害者のわかっているものについては,加害者に求償する制度で,損害のてん補の限度額その他の運営は,おおむね自賠責保険と同様である。
  なお,保険金等の支払状況は 〔I−(II)−26表〕のとおりである。

  自賠責保険(共済)への加入状況をみると,車検の義務がなく,チェックの行われない原動機付自転車等については,従前から種々の対策を講じてきたにもかかわらず,無保険車が多く,その解消が大きな問題となっている。そのため,運輸省においては,警察庁等の関係各省庁及び関係団体の協力を得て,54年9月1日から54年9月30日までの30日間にわたり昨年同様,無保険(無共済)バイク追放キャンペーンを実施する等により保険(共済)加入の促進を図った結果,保険(共済)加入率が53年度末の74.3%から54年度末には78.3%に向上する等多大の成果をあげることができた。


表紙へ戻る 次へ進む