1 国際緊張と日本海運


  1979年五月にイランで発生したアメリカ大使館員人質事件,79年12月のアフガニスタンのクーデターとこれへのソ連の軍事介入をはじめとして,最近の国際情勢は緊迫化の様相を呈している。
  我が国の外航海運は,低廉かつ安定的な輸送力を供給することにより,貿易立国としての我が国経済の発展を支えてきたが,56年のスエズ動乱の際にスエズ運河が閉鎖されたように,国際情勢の緊迫化が海上輸送に与える影響は極めて大きいものがある。特に,我が国への原油供給の7割以上をまかなうペルシャ湾岸地域については,イラン情勢の緊迫化等により,ペルシャ湾向け船舶の調達が困難になったり,戦争保険料率が上昇する等の影響が既に生じている。同地域の情勢が,今後更に悪化するようなことがあれば,これによって,ペルシャ湾内に常時100隻ほどいる我が国商船隊の安全を阻害するような事態の生じることも憂慮されている。
  このように今後の動向が不透明な現下の国際情勢においては,我が国商船隊の動静の把握も含め,情勢の変化に的確に対応した海上輸送の安全確保対策を講じることが必要となっている。
  なお,80年9月に本格的戦闘に拡大したイラン・イラク紛争に関連し,我が国商船隊の動静及び紛争に関する情報の把握,関係者へのこれらの提供に努めているところである。


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