3 東欧圏海運問題


  東欧圏諸国(とりわけソ連)は,近年その商船隊を急速に拡充し,低運賃の提示,特殊な運賃体系の設定等,国営企業という特性を利用して,自国関係航路のみならず三国間航路にも積極的に進出している。
  東欧圏海運の活動に対し,先進海運国の海運企業が商業的基盤に立って競争することは極めて困難であり,このため,欧米諸国では,アメリカが「国営船社規制法」を制定し,EC諸国が「モニタリング・システム」と称する監視制度を設定する等,その対策が講じられている。我が国としても,このような各国の動向を勘案しつつ,適切な対策を講ずることが必要と考えられる。
  東欧圏に関するもう一つの大きな問題としては,シベリア・ランド・ブリッジ(SLB:シベリア鉄道を利用した極東/欧州・中東間の海陸一貫輸送)輸送問題がある。SLBは,運賃が同区間の海上コンテナ航路より安いことがメリットとなっており,過去7年間に輸送量を約5倍に拡大し,現在,日本/欧州間のコンテナ輸送の4分の1近くを占めるに至っている。この輸送方法は,輸送手段の多様化という観点から一概に否定すべきものではないが,日本/欧州間の輸送が特定の国の内陸輸送に過度に依存することにより,安定的な輸送に問題が生ずることのないよう配慮する必要がある。


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