2 過剰造船設備の処理


  53年5月,運輸大臣は,海運造船合理化審議会に対し,「今後の造船業の経営安定化方策はいかにあるべきか」を諮問し,同年7月,その答申を得た。
  それによると,我が国の外航船建造量(竣工ベース)は,55年度まで減少を続け,以後緩やかに回復するものの,今後の経済成長率を比較的高く予測した場合においても,60年において,なお標準貨物船換算トン数(CGRT)で340万トン程度の需給ギャップが生じるものと推定し,総トン数5,000トン以上の船舶の製造をすることができる造船台又はドックを使用する船舶製造業(特定船舶製造業)の過剰設備を処理する必要があるとした。
  このため,53年8月には,特定船舶製造業を,特定不況産業安定臨時措置法(53年5月公布)に基づく特定不況産業として指定するとともに,同年11月には同法に基づく安定基本計画を定めた。
  この安定基本計画は,CGRTで340万トン程度(現有能力の約35%)の設備を54年度末までに基数単位で処理すること等を内容としたものである。
  各事業者は,この安定基本計画に従って設備処理の実施に努めた結果,基数単位により59基,CGRTで364万トンの設備処理が行われたほか,11基の設備においてCGRTで4万トンの能力縮小が行われた。
  また,基数単位による設備処理の結果,処理目標量に対し,過剰処理となる造船事業者等については,一部,総トン数5,000トン未満の設備の新設が行われた。これが9基,CGRTで10万トンである。

  この結果,上記の基数単位による設備処理量に能力縮小による設備処理量を加算する一方,新設された総トン数5,000トン未満の設備能力を差し引くとCGRTで358万トンとなり,設備処理目標量(CGRTで342万トン)に対し,105%の達成率となった 〔II−(IV)−14表〕
  一方,53年11月に特定船舶製造業安定事業協会法が公布され,同年12月,特定船舶製造業における計画的な設備処理を促進するため,特定船舶製造業の用に供する設備及び土地の買収等を行う特定船舶製造業安定事業協会が設立された。
  同協会は,54年度末までに函館ドック株式会社函館造船所等9事業場の施設及び土地を368億円で買収し,今後10年間,これらの管理及び譲渡並びに特定船舶製造業者からの納付金の徴収等を行うこととなっている。
  また,同協会の買収に係る造船設備の能力は,CGRTで合計49万トンであり,中手以下の設備処理目標量(CGRTでコ4万トン)の43%を占めたことは,今回の設備処理において同協会が重要な役割を果たしたことを物語っている。


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