(1) 油送船菱洋丸(5万2,175総トン)遭難事件
51年9月11日午後3時15分ころ台風通過後の豊後水道において,3番カーゴーオイルタンク前部付近の上甲板に座屈を生じ,船体がV字形に屈曲したが,幸い人命には異常はなかった。
本件は,横浜地方海難審判庁において14回にわたる慎重な審理を重ね,54年3月20日裁決が行われ,次のように原因を判示した。
「菱洋丸が海水バラストを船体中央部に著しく偏積した状態で別府湾を出航し,その後No.1ウイングタンクのバラストを排出したため,船体に過大な静水中縦曲げモーメントを生じたが,そのままの状態で豊後水道を南下中,おりからの台風の影響によって船の長さにほぼ等しい長大なうねりを船首方向から受けたため,同モーメントに強大な波浪縦曲げモーメントが重畳し,上甲張構造に座屈最終強度を超える圧縮応力が生じたことによって発生したものである。」
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