1 大型タンカーの安全対策


  原油等を輸送するタンカーの海難は,一歩誤まれば,海洋の大規模な汚染をもたらし,海洋環境や水産資源に甚大な被害を与えるとともに,沿岸施設に対しても火災・爆発の危険を及ぼすおそれがあるが,エネルギー輸送の動向をみると,我が国の原油,LNG,LPGを取り扱う輸入基地,製油所等が,東京湾,伊勢湾,瀬戸内海に集中しており,これらの海域には,全国の特定港に入港するタンカー隻数の約78%が入港している。
  このような状況に対応するため,これらの海域については,原油等の大量流出をもたらす可能性の大きいタンカーの衝突,乗揚げの防止に重点を置いて航行安全対策を講じており,昭和48年から海上交通安全法を施行して,タンカー等に対して航行規制等を行っている。最近,石油の代替エネルギーとしてのLPG,LNGの受入れ基地の立地が,特に瀬戸内海沿岸に多数計画される等今後危険物の輸送構造が変化し,当該周辺地域の安全に大きな影響を与えるおそれもあるので,このような計画に対して,海上保安庁としても安全防災問題を第一義的に配慮しつつ,長期的かつ総合的観点から対処していくことが必要となっている。
  構造,設備の面からの対策としては,「1974年の海上における人命の安全のための国際条約」及び「1974年の海上における人命の安全のための国際条約に関する1978年の議定書」の規定を船舶安全法関係省令に取り入れ,タンカーの操だ装置,防火構造及び消防設備に関する規制を強化した。


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