2 カーフェリーの安全対策
旅客及び自動車等をとう載するカーフェリーについては,ひとたび事故が発生すれば,極めて重大な事態となることが懸念されるので,その航行の安全を確保するため,各海運局に配置した運航監理官により,運航管理業務監査,事故原因の徹底的な調査等を実施する濠ほか,カーフェリー運航事業者に対し運航管理体制の充実運航管理規程の遵守等の指導を行っている。特に,気象,海象状況の悪化の際の運航中止の要領,自動車のカーフェリーへの乗下船,船内における固縛及び積付けの要領等については,運航管理規程に詳細に規定させて事故の防止に努めている。
また,船舶の発航前検査の励行,操練の実施,船内巡視制度の設置等の船員法の規定が十分に遵守されるよう,船員労務官による乗船監査を含め強力に指導監督を行っている。
これらのほか,カーフェリーに乗り組む船舶職員に対して,次の事項について指導監督を行っている。
@ カーフェリーの特性及び当該航路についての気象・海象及び海上交通事情等に精通した船舶職員,又は実習訓練によりこれらを十分に修得している者を乗り組ませること。
A 船舶職員による航海当直を常時行うことのできるよう,航海時間,航海の態様に見合った数の船舶職員を乗り組ませること。
54年に発生したカーフェリーの要救助船舶隻数は9隻で,53年に比べ7隻の減少となっている。これを海難種類別にみると,衝突,機関故障が各3隻,乗揚げ,火災,舵故障が各1隻となっている。なお,要救助海難とはならなかったが,54年4月25日に大型カーフェリーさんふらわあ(1万1,567総トン,乗組員44人,旅客984人,車両151両)が貨物船明幸丸(1,133総トン・乗組員13人)と霧中の明石海峡で衝突し,更に,55年1月11日にも来島海峡で貨物船ナウン号(6,960総トン,乗組員38人)と再度衝突事故を起こしている。
カーフェリーの事故を未然に防止するため,海上保安庁は,海上交通関係法令に基づく航法の遵守,運航管理規程の遵守等に関して指導を行い,また,平素から機会あるごとに安全運航の指導,緊急時の避難・救助訓練の実施,関係法令励行の指導等に努めている。また,濃霧期には,特定の海域でカーフェリーと一般船舶とが分離して運航するようにする等の指導を行っている。54年には,春の全国海上交通安全運動や秋の全国海難防止強調運動期間を通じて1,852隻のカーフェリーや旅客船について訪船指導を行い,また,53回にわたり事故対策訓練の指導を行った。
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