2 日本をめぐる問題
(1) 我が国と諸外国との航空交渉
ア 航空協定締結交渉
我が国の航空市場としての価値の増大に伴い,我が国との定期航空路線開設のための航空協定締結を希望する国は極めて多く,80年8月現窪30か国にのぼっている。78年5月の新東京国際空港開港以降,我が国は各国との航空協定締結交渉を精力的に進めてきたが,79年11月にニュー・ジーランドと,79年12月にバングラデシュと,80年三舟にスペインと,8G年2号にフィジーとそれぞれ協定内容について合意に達し,80年1月以降これら4つの航空協定の署名が相次いで行われた(1月18日に日本・ニュー・ジーランド協定署名,2月12日に日本・バングラデシュ協定署名3月10日に日本・フィジー協定署名,3月18日に日本・スペイン協定署名)。これら4協定は80年5月14日に国会で承認された。その結果同年5月にバングラデシュ航空が我が国への乗入れを開始し,7月には日本航空がフィジー経由ニュー・ジーランド線及びスペイン線の運航を開始し,更に,8月にはニュージーランド航空の我が国乗入れが開始された。また,フィンランドとも78年12月以降,数次にわたり,航空協定締結のための交渉を行ってきたが,10月,協定内容につき合意に達し,仮署名を行った。
航空協定の締結及び定期航空路線の開設は両国の友好関係の強化及び相互交流の促進に寄与するものであり,基本的には望ましいものであるが,我が国の空港事情,両国間の航空需要量等からみて,各国から寄せられている航空協定締結の希望には必ずしも十分に応じられうる体制にはない。我が国としては,空港事情のほか,両国間の航空需要の見通し両国間の政治,経済,文化等の交流関係,相手国のハイジャック防止対策への配慮等を考慮しつつ,漸次交渉を行うこととしている。
イ 月末航空問題
日米航空協定については,締結当初から基本的な不均衡が存在するとして数次にわたり交渉を行ってきた。その結果,我が国は,59年にロサンゼルス乗入れ権を,65年にニューヨーク経由世界一周線を,69年にアンカレジ経由ニューヨーク線及びサイパン経由グアム線を獲得したが,他方,その都度,既得路線権の放棄,アメリカのチャーター専門企業の乗入れを認める等の代償を払ってきており,未だ基本的な不均衡の是正は十分行われていない。
76年10月,我が国は現行の日米航空協定に存する日米間の権益の不均衡を抜本的に是正するため日米航空協定改定交渉を開始し,78年3月まで6回にわたって交渉を行った。現行の日米航空協定において,我が国にとって不利益となっているのは主として以下の4点である。@相手国内乗入れ地点については,形式的には平等に定められているが,国土の広さとの関係から実質的には不平等となっている。即ち,アメリカ企業は,日米間航空需要のほとんど全ての輸送に参加し得るのに対し,日本企業は,アメリカ中西部,アメリカ西海岸の一部,南部等の重要市場に乗入れ地点を有していない等制限されている。A以遠権については,アメリカが日本以遠無制限の権利を有しているのに対し,日本はニューヨーク以遠欧州のほか,運輸権のない中南米への運航権しか与えられていない。なお,現在,我が国はこれらの権益を実際には行使していない。B指定企業数については,協定上両国とも複数とされているが,日本側が事実上日本航空1社であるのに対し,アメリカ側はパン・アメリカン航空,ノース・ウエスト航空,フライング・タイガー航空及びコンチネンタル/ニア・ミクロネシア航空の4社が乗り入れている。C輸送力については,現行協定下において輸送力の審査は不可能ではないものの,原則として企業が自国に決定できることとなっているため,数多くの強大な企業を有するアメリカに有利となっている。これまでの交渉で日本側は上記の不均衡の是正を求めてきたが,アメリカ側は巨大な航空企業力を背景として,チャーター,輸送力等に関する自由競争政策を日本側が受け入れることを要求してきたため,交渉は78年3月以来中断されたままとなっている。
ウ その他の航空交渉
上記のほか,既に協定締結済みの国との間でも,増便,機材大型化,運賃問題等をめぐって頻繁に交渉を行っている。しかし,燃料,空港事情等の制約もあり,多くの場合これらの交渉は難航している。
(2) 我が国をめぐるチャーター輸送の現状
我が国発着のチャーター便は,79年度で旅客,貨物合わせて約4,800便(片道ベース)であり,ここ数年間はほぼ頭打ちの状態にある。北大西洋や欧州地域内ではチャーター輸送が盛んに行われているが,これに対し,我が国では,航空輸送に占めるチャーター輸送の比重は小さい。これは,我が国が定期便を航空運送の基盤とし,チャーターはそれを補完するものであるとの基本政策をとっており,一定の条件の下でチャーターを認めることとしているためである。
従来,我が国は,特定の偶人または法人がチャーター契約を締結し,チャーター料金の全額を負担するオウンユース(own use)チャーター及び特定の団体の会員にのみ認められるアフィニティ(affinity)チャーターしか認めてこなかったが,最近の海外旅行市場の特殊性(観光を目的とした団体旅行が多い。)を考慮し,消費者の需要の高まりに対応して,78年11月,一般旅行業者が地上部分も含めた包括的旅行サービスの旅客を公募し,自ら用機者となって行う包括旅行(inclusive tour)チャーター(ITC)を,当面80年3月3旧までの期限付きで試験的に導入した。その結果当該期間において,我が国発着のITCは片道ベースで1,680便にのぼった。ITCについては,更にその動画を見極めるため,80年4月以降も引き続き試験的に認めている。このように時代の要請に対応しつつ,定期便による輸送とチャーター便による輸送との調和ある発展を図り,適正な輸送秩序を確保していくことが重要な課題となっている。
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