4 気象情報の提供
自然災害の防止軽減のためには,天気予報精度の向上,地震予知,火山噴火予知等の研究のみならず,観測成果等の情報を適時適切に伝達し,利用に供することも重要である。このためには,科学技術,とりわけ情報技術の進歩を踏まえて,気象情報提供業務の改善を図ることとし,気象資料伝送網計画を推進しているが,その中において,報道機関,防災関係機関等に対して即時的に資料提供することを考慮することとしている。54年度は,気象庁本庁の気象資料自動編集中継装置の増強に着手した。
長期の防災計画に必要な各種観測成果等は,気象庁月報,気象庁年報等の定期刊行物に載せられ,災害の調査報告も必要に応じ刊行している。
農林,水産,電力,建設等の産業は,気象の影響を受けることが多いので,日常の即時的情報として農業気象通報,漁業気象通報,電力気象通報等を提供しているほか,週間予報,1か月予報,3か月予報,季節予報等が災害の防止軽減や作業能率の向上に利用されている。更に,各種産業の長期計画に必要な気象,海洋等の調査・統計の刊行及び提供を行っている。
国際的業務では,WMOの決議により,日本の船舶をはじめ,各国の船舶からの年間約19万通の観測報に基づいて海上統計が行われ,「WMO海洋気候概要」として刊行され,国の内外で広く利用されている。
近年の異常気候のひん発傾向は,世界的にも国内的にも大きな問題となっている。気候問題は,学問的にも,行政面でも非常に多岐の分野にわたるため,学際的研究体制のもとで,行政機関が協力し検討を進める必要がある。
このため,気象庁は,各方面の学識経験者及び関係省庁の職員から構成する気候問題懇談会を54年10月から数回開催し,気候変化と社会変動,海洋と気候変動,大気組成と気候変動等について検討を行ってきた。
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