第3章 望ましい交通体系形成への新たな展開はじめに

  激動の1970年代を通じて我が国経済社会は大きく変貌し,内外の環境の変化に適切に対応しつつ新たな発展へと備えることが,我が国の基本的な課題となっている。
  第1章でみたように,我が国経済は安定成長へと移行するとともに,エネルギー,環境,空間等の制約条件は一層厳しさを増し,また,国民の意識も交通に対する要望も,新しい時代へ向けて著しい変化の過程にある。こうした交通をめぐる諸情勢の変化を踏まえ,交通部門における新たな課題を探るとともに,新たな発想に立った政策の展開を図ることが求められている。このような要請に応えるため,昭和56年7月,運輸政策審議会は「長期展望に基づく総合的な交通政策の基本方向」について答申を行った。
  同答申は,経済社会の変貌,交通需要の動向を展望し,政策課題を克服しつつ1980年代における総合的な交通政策を着実に進めていくためには,
 @ 交通部門においても,できるだけ無駄の少ない効率的な交通体系の形成を図っていくことが必要であること,
 A 来るべき21世紀を目指して,必要と思われるものは苦しいなかにあってもこれを伸ばしていくという長期的な視点での対応が必要であること,
 B 国民のゆとりを求める要請に応える輸送の実現を図っていくこと,
 C 活力の維持を図っていくため,交通部門においても,例えば民間の企業の創意,工夫を生かすなどバイタリティが自由に発揮できるよう活動の場を整えていくことが必要であること,
 D 「競争すべきところは競争するが,協調すべきところは協調し相互に連携し補完しあっていく」という柔軟な発想に切り換えていくことが必要であること,等の基本理念に立脚して個々の政策の位置付けを行い,整合性のある政策展開を図っていくことが必要であるとしている。また,望ましい交通体系の形成に当たっては,各種の政策措置を前提としつつ各輸送機関間の競争と利用者の自由な選好が反映されることを原則とし,政策措置もできるだけこのような原則が生かされるように配慮して講ずべきであるが,1980年代においては,エネルギー,交通空間等の制約の強まりが予想されるので,一層政策措置の充実を図っていく必要があるとしている。
  更に,同答申は,国鉄の経営再建など交通企業の経営の安定,総合安全保障の確保等についての基本的考え方や省エネルギー対策など,交通の各分野に共通する政策のあり方についても提言を行っている。
  このような政策提言の趣旨を踏まえつつ,運輸省としては,幹線旅客交通,地域旅客交通,物流,運賃の各課題に取り組む今後の基本的な方向について次のように考えている。


第1節 運賃のあり方

第2節 幹線旅客交通

第3節 地域旅客交通

第4節 物流


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