5 運輸事業経営における諸問題


(1) 経営を圧迫する諸経費の増大

  輸送原価の推移をみると, 〔1−3−11図〕のように,52,53年度における航空を除けば全般的に輸送原価は上昇している。特に,53年度に鈍化した輸送原価の上昇率が,54,55年度と再び急上昇している点は見逃せない。 〔1−3−12図〕をみると,第1次石油危機の影響をうけ増大した動力・燃料費は,石油消費節減努力により,乗合バス業では52,53年度に,航空運送業では53年度に減少したものの,54年度は第2次石油危機の影響を受け再び増加に転じており,54,55年度は最大の輸送原価上昇要因となっている。また,航空運送業の53,54年度における輸送原価の縮減は輸送量の大幅な伸びによるものであったが,55年度には一転して減少となり,輸送原価を押し上げている。

(2) 地方における運輸事業経営

  地域交通は,住みよい地域社会形成の基盤として重要な役割を担っているが,人口の少ない農山村部においては公共交通が衰退し,住民の足の確保が困難となりつつある。これらの地域では,マイカーへの依存度が高くなっているが,なおマイカーに依ることが困難な人々のための移動手段を確保する必要があり,このため,国・地方公共団体からの公的助成をはじめとした強力な施策が施されている。また,地域交通の担い手である交通事業者自身の努力もなされているところであるが,依然としてその経営には厳しいものがある。
  例えば,A県内における乗合バス事業の収支状況をみると 〔1−3−13図〕,人件費,燃料油費など諸経費の増大により全県的に収益性の悪化が拡がっており,また,過疎地域を運行する乗合バス事業の収益性が低くなっているのがわかる。

  このような過疎地域をはじめとして,公共交通をできるだけ維持し,あるいは改善するため,各種の生産性向上や合理化の促進など運輸事業者の不断の努力を前提に,地域交通対策の推進,運輸関係社会資本の整備等の見地から 〔1−3−14表〕のとおり種々の助成措置が講じられている。


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