3 「経営改善計画」の概要


  危機的な状況下にある国鉄経営の再建を図り,国鉄が今後とも我が国の基幹的輸送機関としての役割を果たしていくためには,国鉄自身が責任ある経営体制を確立するとともに,労使相協力し,意を新たにあらゆる分野において徹底した経営改善に象り組むことが何よりも必要である。
  このような見地に立って,いわゆる「後のない計画」との認識の下に策定されたのが,今回の「経営改善計画」である。この計画は,国鉄のあらゆる分野において徹底的な経営改善措置を講ずることとしている。このため,要員縮減等の年次別計画,旅客,貨物等の部門別の計画等により具体的な目標を明示するとともに,これらの国鉄自身の徹底的な経営改善措置にあわせて,国鉄自身の企業努力のみでは解決し難い構造的問題等について講じられる行財政土の措置と相まって,60年度までに経営の健全性を確保するための基盤を確立し,引き続き,速やかに収支の均衡の回復を図ることとしている。
  次に,この計画の概要について述べる。

(1) 経営の重点化,減量化と能率の向上

  都市間・大都市圏旅客輸送及び大量・定型貨物輸送といった鉄道の特性を発揮し得る分野に経営を重点化し,地方交通線など鉄道の特性を発揮し難い分野については徹底した合理化を行い,国鉄経営の全体について減量化施策を講ずることとしている。
  また,業務運営全般にわたる能率の向上を進めることとし,このため,民間における能率同上の手法等も取り入れ,作業体制の見直し,機械化,部外能力の活用等を行うことにより,2割を超える能率の向上を図ることとしている。
  これらの経営の重点化,減量化,能率の向上を図ることにより,60年度に職員35万人体制とすることとしている 〔1−4−4表〕

(2) 収入の確保

  国鉄自身の創意工夫により増送増収努力を行うとともに,他の輸送機関との競合関係等を考慮しつつ,きめ細かな工夫を凝らし,適時適切な運賃改定を行う一方,全職員あげて安定した列車運行の確保とフロントサービスの向上に取り組むこととしている。
  このほか,関連事業については,既存事業の見直し,貸付料金の適時適切な改定等を行うとともに,資産の有効利用による新規事業の開発等を積極的に進め,60年度までに関連事業で約5,000億円の収入を確保する。また,資産処分については,不用地のみならず,未利用地や現に事業用地として利用している用地についても処分用地として生み出すこととにより,60年度までに約5,000億円の収入を確保することとしている。

(3) 設備投資の抑制

  投資に伴う資本費の増加が経営の圧迫要因となっている現状にかんがみ,設備投資については極力これを圧縮することとし,計画期間中の投資規模を現状程度に抑制することとしている。

(4) 労使関係の改善等

  労使関係の改善は国鉄再建のための基本的条件であり,労使が国鉄の置かれた現状を十分認識し,相互の信頼関係を深めることにより協力体制を築き上げるよう,一層の努力を傾注することとしている。また,国鉄経営の厳しい状況について職員の認識を深め,執務態度の厳正を図るとともに職場規律の確立に努めて,国民の信頼に一層応え得る国鉄とすることとしている。

(5) 収支改善の目標

  この計画における経営改善措置を確実に実施することにより,国鉄の収支は,行財政上の措置と相まって,60年度までに一般営業損益においてできるだけ多くの益金を出し,60年度には幹線の損益において収支均衡を達成する(今後開業する新幹線に伴う影響を除く)など健全経営の基盤を確立するとともに,61年度以降については可及的速やかに収支均衡の実現を図ることとしている 〔1−4−5表〕


表紙へ戻る 目次へ戻る 前へ戻る