5 構造的問題等
国鉄の赤字の背景には,次に述べるよらな自らの経営努力のみでは解決し難い,いわゆる構造的問題等も存することがあげられており,54年12月29日閣議了解された「日本国有鉄道の再建について」にあるように,政府は,国鉄の徹底的な経営改善措置とあわせて,これらの構造的問題等を中心に行財政上の措置を講ずることとしている。
54年度末における国鉄の長期債務残高(一般勘定)は10兆1,493億円にのぼっており,長期債務の増加に伴う支払利子の増大は国鉄の経営を圧迫している。
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国鉄は,55年度には追加費用と負担金をあわせて3,245億円を負担しており,この共済年金に係る負担の増大が国鉄の経営を圧迫している。
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国鉄を退職する職員は近年増大しつつあり,56年度においては2万人を超え,退職手当の額も3,759億円にのぼっている。これは,戦中戦後において大量に採用した職員が,現在退職期を迎えていることが原因である。この問題は,60年代前半において退職者の数が基準的な退職人員数を下まわることになるまでしばらくは続くものと考えられ,国鉄の経営を圧迫することになる。
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鉄道の特性を発揮し難い地方交通線については,前述したとおり徹底した合理化,特別運賃の設定,バス輸送等への転換等の対策を推進する必要がある。政府は,これらの対策の円滑な実施を図るため,バス輸送等への転換促進措置に要する費用,転換後のバス事業等の経営から生ずる欠損及び国鉄の維持する地方交通線の経営から生する欠損について,所要の公的助成等の措置を講ずることとしている。この他,国鉄地方バス路線の経営から生ずる欠損について所要の助成を継続することとしている。
国鉄は,運賃について通学定期の割引,身体障害者の割引等の公共割引を行っているが,これらの運賃上の公共負担の軽減対策については関係省庁において検討を進め,早急に結論を得ることとし,これに基づき所要の措置を講ずることとしている。
国鉄における設備投資には,社会的要請等から,企業採算性を超えて実施しなければならないという性格を有するものがある。政府は,設備投資による国鉄の経営負担を軽減するため,43年度から工事資金に係る利子の一部を助成することとし,その後,国鉄の経営状況の悪化に対応して,国鉄の設備投資に係る助成制度の拡充を図ってきたが,今後もこのような投資に重点を置いて,その負担軽減のための助成を行うこととしている。
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