2 運賃体系のあり方


  前述したように,コストに基づいて運賃を決定するとしても,その枠内で,具体的な運賃体系の設定に当たってはいくつかの選択がありうる。これは交通企業が回収すべきコストをどの利用者からどれだけずつ回収するかという問題であるから,具体的な運賃体系の設定に当たっては,まず利用者相互間の負担の公平に配慮すべきであり,そのほか,利用者の利便の向上,経営効率の改善への寄与,運営コストの節減,制度のわかり易さ等に配慮すべきである。そこで,このような総合的見地から,我が国の現行の運賃体系についてみてみると,例えば次のような改善すべき点があると思われる。
 (1) 効率的な交通体系の形成に資するという観点からすると,できるだけ個々の輸送に要するコストを個々の運賃に反映させることが望ましい。このような見地から見ると,国鉄の全国一律運賃制については,鉄道特性を発揮し得ない分野から生ずる赤字負担により鉄道特性を発揮し得る分野の維持発展が阻害されるおそれがあるので,国土の均衡ある発展に資するという配慮の必要性等にも留意するとともに,経営再建との関係等を十分勘案しつつ,そのあり方を検討し,逐次是正を図る必要がある。また,航空運賃についても,ターミナルコストを運賃に適正に反映させ,路線別原価主義による遠距離逓減の運賃体系とする必要がある。これにより高速交通の利便が遠距離の地域にも及ぼしやすくなることとなる。55年3月の航空運賃改定の際には遠距離の改定率を近距離の改定率より低位にとどめているが,今後の改定時に更に遠距離逓減化を進める必要があろう。
 (2) 利用者の利便の向上という観点からすると,本章第3節で述べるように公共交通ネットワークが整備され,乗継ぎ利用の多い都市交通においては,併算制による割高感を解消して利用者の利便の向上を図るため,併算運賃を割り引く,いわゆる乗継運賃を積極的に導入すべきである。56年春の大手民鉄等の運賃改定に当たっても,運輸審議会,物価安定政策会議特別部会等において,乗継運賃の検討を求める意見が出されており,これらを受けて関係者において検討が進められている。
 (3) 交通施設を効率的に利用するとともに,ピーク時の需要集中に伴う輸送力増強のための投資を避けるという観点からすると,オフピーク割引の導入を検討するなど,弾力的な運賃設定を一層拡大し,輸送需要の平準化を図る必要がある。


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