4 労働問題
国鉄における労働組合の組織状況は 〔I−(I)−7表〕のとおりであり,全職員約40万8,500人のうち組合加入者は約34万人である。
56年春闘に際しては,国鉄の各組合は,賃金引き上げ(国鉄労働組合は組合員1人平均月額2万5,000円,国鉄動力車労働組合は35歳の組合員について2万5,000円,鉄道労働組合は10%(約2万円),全国鉄施設労働組合は35〜39歳の標準労働者について2万1,000円,全国鉄動力車労働組合連合会は1人平均3万1,000円)の要求を国鉄当局に提出した。これに対し,当局側は,4月15日に組合員1人平均4,140円の賃金引き上げ有額回答を行ったが,組合側が不満としたため交渉は決裂し,4月16日(千葉動労のみ17日),公共企業体等労働委員会(以下「公労委」という)の調停に係属した。
組合側の予定していた4月23,24日のストを回避すべく,引き続き折衝が重ねられたが,調停がまとまらないまま,23日未明,22日に私鉄の労使交渉が妥結したこともあって組合側はスト中止を決定した。
公労委の調停作業はその後も進められたが,4月23日に示された調停委員長見解に労使双方の同意が得られず,調停は不調となり,仲裁移行が決定された。
5月16日,調停委員長見解どおり,4月1日以降1人当たり基準内賃金の3.81%プラス2,880円,組合員1人平均10,233円の賃金引き上げの仲裁裁定が下された。この仲裁裁定の取り扱いについては,「昭和56年度予算は各公共企業体等とも経費全般にわたり厳しい編成が行われており,また,予算成立後わずか2か月という段階でもあって,その実施が予算上可能であるとは断定できない」として,5月26日の閣議において,公共企業体等労働関係法第16条第2項の規定に基づき,議決案件として国会に付議することが決定された。同案件は第94回国会に提出されたが継続審議とされ,第95回国会において承認の議決がなされ,仲裁裁定は実施された。
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