3 労働問題
56年春闘において,日本私鉄労働組合総連合会(以下「私鉄総連」という)は,3月2日基本給の1人平均2万円の引き上げ,年間臨時給の前年度協定月数にそれぞれ0.2ヵ月分の上積み等を内容とする要求を,社団法人日本民営鉄道協会及び各会社に行った。この要求に対する経営者側と私鉄総連との中央集団交渉は,昨年と同様に8社(東武,東急,営団,近鉄,南海,京阪,阪神,阪急)で行われ,4月4日の交渉で,組合側は経営者側に要求回答を4月10日とするよう申し入れた。4月10日,経営者側は基本給の引き上げ1万4,000円,年間臨時給昨年同額との第1次回答を行ったが,組合側はこの回答を不満としたため,以降少数メンバーによる労使交渉が継続された。4月22日,経営者側から基本給の引き上げ1万4,500円,年間臨時給昨年同額とする内容の第2次回答が行われ,組合側は,この2次回答を不満として22日,48時間のストライキに突入した。しかし,22日午前6時,経営者側は,基本給1万4,700円,年間臨時給昨年同月数及び生活関連分として1か月1,000円を増額し,56年10月以降支給するという第3次回答を行ったため,組合側は,同日午前7時にストライキ中止の指令を出した。ストライキの全面実施は10社(東武,京成,京王,東急,営団,南海,京阪,阪急,阪神,西鉄),集改札ストと特急スト1社(近鉄),集改札スト1杜(名鉄)であり,このストライキによる列車の運休本数は3,700本,その影響人員は210万人であった。なお,ストライキを実施しなかった会社は3社(小田急,京浜,西武)であった。
一方,京成電鉄の春闘労使交渉については,合理化問題も絡んで進展がみられず,京成労組は22日からの48時間の統一ストライキに入ったが,23日の中央労働委員会会長からの勧告もあり,次のような内容で労使は合意し,23日牛後1時ストライキを中止した。
(ア) 基本給1万4,700円アップ,手当1,000円を10月から実施,年間臨時給4.755か月(昨年同月数)
(イ) 上記給与改善と会社が提案している合理化問題について,5月末までに合意に達するよう労使は努力する。合意が得られなかった場合は白紙とする。
その後,労使交渉が継続され,6月19日,上記のとおりの給与改善と合理化を推進するという内容で最終妥結した。
中小民鉄は,大手組合より一日遅れの4月23日からの48時間ストライキを組んで労使交渉を進めてきたが,22日または23日にほとんどが妥結したためストライキに突入したのは11社のみであった。妥結の内容は,62社平均で1万4,465円の賃金引き上げ(上昇率8.2%)であった。
公営交通(鉄軌道部門)の労働組合(9組合)は,4月23日,24日の両日の時限ストライキを予定したが,前日(22日)ストライキを中止した。
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