1 自動車損害賠償保障制度
自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」という)は,自動車による人身事故の被害者に対する損害賠償の履行の確保を目的とする強制保険である。被害者の保険会社に対する直接請求制度,被害者の当座の資金として支払われる仮渡金制度,保険金支払・保険経理等につき国の関与を確保し保険運営の適正化を図るための政府の再保険制度等が設けられており,社会保障的性格の強い保険として被害者保護の増進に大きな役割を果たしている。
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ひき逃げや無保険の自動車による事故の被害者は,上述の自賠責保険等による損害のてん補を受けられないので,これを救済するために,政府は自動車損害賠償保障事業を行っている。この保障事業は,保険会社に対する賦課金等を財源として,被害者からの請求により自賠責保険(共済)に準じて加害者に代って損害のてん補を行い,その後加害者のわかっているものについては加害者に求償する制度である 〔I-(II)-26表〕。
自賠責保険(共済)への加入状況をみると,車検が義務付けられている自動車についても,ある程度無保険車が存在するが,車検の義務がなく,チェックの行われない原動機付自転車等については無保険車が多く,従前から種々の対策を講じてきた。特に,53年度から運輸省において関係各省庁及び関係団体の協力を得て,毎年実施している無保険(無共済)バイク追放キャンペーンにより原動機付自転車の付保率は飛躍的に同上した。55年度においては,55年9月1日から9月30日までの30日間にわたり同キャンペーンを実施した結果,原動機付自転車の台数は54年度末の1,108万台から55年度末には1,207万台に増加したにもかかわらず,保険(共済)加入率は,54年度末の78.3%から55年度末には80.2%に向上した。
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