3 近海海運問題


  近海船は,我が国と極東及び東南アジア諸国との間の海上輸送に従事しているが,これら諸国との貿易量は,我が国の総貿易量に対し,輸出においては約4割,輸入においては約2割とかなりのウエイトを占めている。また,近海船の主要な貨物は,これら諸国から輸入する乾貨物の約半数を占める木材(南洋材)であり,これらを輸送する船舶はおおむね3,000総トン(5,000〜6,000重量トン)程度の船型が一般的である。
  近海海運業は,相手国の港湾事情等により大型船型が不適な面もあって,合理化やコスト低減を図る余地が乏しく,国際競争力の喪失という外航海運業一般が抱えている構造的な問題がより顕著に現われている分野である。
  南洋材についてみると,50年には,我が国の景気の停滞を反映して輸入量が著しく低下し,運賃市況も暴落したため,日本船の近海海運業からの総撤退が論じられるまでの未曽有の不況に見舞われた。
  その後,市況は回復に向ったが,55年春ごろから我が国における住宅需要が,住宅建築費,地価の高騰,実質所得の目減り等から減退したこと等により,再び木材輸入量の大幅な減少傾向が見うけられるなど,その経営環境は厳しい状況となっている。
  一方,南洋材輸送船の船腹量は,外国用船が横ばいであるのに対し,日本船は年々減少している。これは,従来から行われている近海船の過剰船腹対策としての近海船建造抑制措置等の影響とみられ,船腹需給は徐々に均衡しつつある。しかし,この結果,日本船の老朽化,不経済化は避けられず,国際競争力がますます低下するという問題が生じてきたため,物資の安定輸送を確保する観点から,53年度以降過剰船腹の解消を図りつつ,船質を計画的に近代化すべく解撤(輸出)建造方式による船舶整備公団との共有船建造が行われている。
  また,最近の傾向としては,資源保有国による自国海運の増強や木材の輸出制限等の動きがみられ,これらの国による自国船優先主義政策が強化される方向にあるため,我が国の近海海運業の将来は極めて厳しいものとなっている。


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