1 国際緊張と日本海運


  1980年9月に本格的な紛争に拡大したイラン・イラク紛争は,依然として解決の目途がつかず,長期化の様相を呈している。紛争発生当時より紛争危険水域に閉じ込められている船舶は全体で70隻有余にのぼっており,我が国商船隊7隻も紛争危険水域に閉じ込められたままになっている。
  我が国としては,かかる事態の発生と同時に,閉じ込められている船舶との連絡に努めるとともに,緊急時における乗組員の避難,船体の安全確保及び船舶の脱出等の各種の対応措置を検討しつつ,これらの措置について紛争当事国政府への申し入れをはじめとして,国連及び国際赤十字等の国際機関に積極的に働きかけている。しかしながら,船舶の脱出には戦火が止むのが前提となっており,実現に至っていない。
  我が国の外航海運は,貿易立国である我が国の経済の安定を支える重要な役割を果たしている。しかしながら,我が国の経済はかかる国際緊張に対して脆弱であるので,経済・技術協力の推進等を通じて,発展途上国の経済の安定に資するとともに,これら諸外国との友好関係を維持,確立していく必要がある。
  また,イラン・イラク紛争のような国際紛争は,我が国海運に対して直接影響を及ぼすので,この紛争の経験を生かしながら,緊急時における我が国商船隊の安全を確保するための情報連絡システムの検討を早急に進める必要がある。


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