2 船員需給の動向
(1) 外航の船員需給
55年10月現在における外航船員数は 〔II−(II)−1表〕のとおり,約3万8,400人と前年度に比べ約2,500人減少し,50年度以来の減少傾向が続いている。この減少傾向は,外国用船の増加と一船当たりの乗組員数の減少によるものと考えられる。なお,55年10月1日現在における外航二団体の船員数は 〔II−(II)−6表〕のとおりである。
外航における船員の需給を有効求人倍率でみると54年(月平均)の0.29倍から55年(月平均)0.61倍と上昇しており,年間の推移をみても上昇傾向にあり,56年に入ってからは,同年4月で1.71倍まで上昇している。これは,各企業においてここ数年間採用を手控えていたことから,ある程度の補充が必要になってきたことに加え,業績向上により採用余力がでてきたためと考えられる。
外航における採用状況を外航二団体についてみると,年間入職者数は 〔II−(II)−7表〕のとおり前年とほぼ同数の約300人となっているが,このうち新規学卒者については123人であり,前年に比べ44.7%の増加となった。
なお,商船大学,商船高等専門学校における海上就職率は 〔II−(II)−8表〕のとおりである。
(2) 内航の船員需給
55年10月1日現在の内航船員数は,約6万3,200人と前年度に比べ約900人の増加となっている。
内航における船員の需給を有効求人倍率でみると,54年(月平均)の1.00倍から55年(月平均)の1.76倍へと上昇を示しており,56年入ってからは同年4月で2.20倍となっている。これは,54年から55年前半における好調な輸送活動を反映しているものと考えられる。次に,採用状況を内航二団体(内航労務協会,一洋会)及び全内航についてみると,年間入職者数は929人で前年度に比べ約20%の増加となっている。このうち,新規学卒者は132人,船員経験者は764人で前年度に比べそれぞれ37人(38.9%),107人(16.3%)の増加となっている。
ところで,最近,内航における船員不足の問題が指摘されているが,特に若年労働力の内航離れの傾向は深刻となっている。56年4月の船員職業安定所(本局分)における内航への求職者の年齢構成をみてみると,45歳以上の中高年齢層が62%と過半数を占めているのに対し,24歳未満の若層年はわずかに4.3%にすぎない。
このような若年労働力の内航離れは,陸上産業への就職志向,陸上との賃金格差の縮小,核家族化の進展等を反映しているものと考えられる。
(3) 漁業の船員需給
漁業における船員数は52年に約12万7,800人であったが,以後国際的な漁業規制の影響により毎年減少を続けてきた。55年においてもこの傾向は止まらず,約11万3,600人(対前年比約3,300人(2.8%)の減少)となった。
一方,船員職業安定所における求職者の数は,このような状況を反映して月平均で52年1,420人,53年3,990人,54年4,850人と大幅な増加傾向にあったが,55年には依然として国際的な漁業規制の影響下にあるものの4,100人と前年に比べ750人(15.5%)の減少となっている。
しかしながら,漁業をめぐる雇用情勢は,今後とも遠洋かつお・まぐろ漁業,米国西海岸におけるずわいがに漁業等の減船問題をひかえ予断を許さない状況にある。
漁業における55年の採用状況を周年操業の経営形態である遠洋まぐろ漁業,遠洋トロール漁業,以西底曳網漁業についてみると,年間入職者数は9,737人となっており,その内訳は船員経験者9,004人(92.5%),船員未経験者733人(7.5%)である。特に,新規学卒者は444人(4.6%)となっており,依然として漁撈技術に習熟した船員経験者への依存度が高い。また,入職した船員経験者のうち前職歴が漁船員であった者は98.4%を占め,部門内移動が顕著となっており,縁故採用(全入職者の36.7%)と並んで漁業における船員需給の特徴となっている。
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