1 海難の発生状況


  昭和55年に我が国の周辺海域において救助を必要とする海難に遭遇した船舶(要救助船舶)は2,386隻,161万4,000総トンで,これに伴う遭難者は1万2,794人,このうち死亡又は行方不明は444人であった。55年の要救助船舶を用途別にみると,漁船が1,110隻で最も多く全体の約半数を占めており,次いで貨物船443隻,プレジャーボート390隻,タンカー83隻,旅客船37隻,その他323隻となっている。また,これを海難種類別にみると,乗揚げが最も多く488隻であり,次いで衝突409隻,機関故障327隻の順となっており,これらの海難で全体の約半数を占めている。
  最近6年間の海難の発生状況の推移は 〔II−(V)−1図〕のとおりであり,近年おおむね減少の傾向にあったが,55年は前年に比べ台風や発達した低気圧の影響を受けて要救助船舶隻数が増加した。

  このように,我が国周辺海域は気象・海象の自然条件が厳しいため,例年,荒天に起因した海難の発生があとを絶たないが,特に55年には100海里以遠の遠距離海域において118隻が海難に遭遇した。この要救助船舶は,隻数でみると全体の5%にすぎないが,その死亡・行方不明者数は148人と全体の3分の1を占めている。なかでも,55年末から56年初めにかけて相次いで発生した大型船等6隻の海難は行方不明者70人を数え,しかもこれらの発生海域が,太平洋を越えて我が国へ資源を輸送する要衝航路にあたる千葉県野島埼の東方海域に集中していることが注目される。
  更に,特記すべきものとして,56年4月鹿児島県西方海域において,アメリカ原子力潜水艦が貨物船日昇丸(2,350総トン,乗組員15入)と衝突し,日昇丸が沈没し,船長ほか1人が死亡するという事故が発生している。


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