2 カーフェリーの安全対策


  旅客及び自動車等を搭載するカーフェリーについては,ひとたび事故が発生すれば,極めて重大な事態となることが懸念されるので,その航行の安全を確保するため,各海運局に配置した運行監理官により,運航管理業務監査,多客期における安全総点検,事故原因の徹底的な調査等を実施するほか,カーフェリー運航事業者に対し運航管理体制の充実,運航管理規程の遵守等の指導を行っている。特に,気象・海象状況の悪化の際の運航中止の要領,自動車のカーフェリーへの乗下船,船内における固縛及び積付けの要領等については,運航管理規程に詳細に規定させるとともに,それを厳守するよう強力な指導を行って事故の防止に努めている。
  また,船舶の発航前検査の励行,操練の実施,船内巡視制度の設置等の船員法の規定が十分遵守されるよう,船員労務官による乗船監査を含め強力に指導監督を行っている。
  55年に発生したカーフェリーの要救助船舶隻数は11隻で,特に55年11月7日には大型カーフェリーこがね丸(7,188総トン,乗組員40人,乗客36人,車両14台)が来島海峡馬島に乗揚げ,続航してきた旅客船あいぼり丸(3,155総トン,乗組員45人,乗客194人)が,こがね丸に追突するという事故が発生している。カーフェリーは,燃えやすい自動車と多数の旅客を運送していることから,事故の未然防止は極めて重要であり,このため船舶運航上の基本的事項の確実な実行を繰り返し指導していくことを第一義として,より一層きめ細かく安全対策を推進していくことが必要である。このため,海上保安庁は,海上交通関係法令に基づく航法の遵守,運航管理規定の遵守等に関して指導を行い,また,平素から機会あるごとに安全運航の指導,緊急時の避難・救助訓練の実施,関係法令の励行の指導等に努めている。また,濃霧期には,特定の海域でカーフェリーと一般船舶とが分離して通航するようにするなどの指導を行っている。
  55年には,春の全国海上交通安全運動や秋の全国海難防止強調運動の期間を通じて,約1,500隻のカーフェリーや旅客船について訪船指導を行い,また,56回にわたり事故対策訓練の指導を行った。
  このほか,旅客定期航路事業の免許等の際には,係留施設,基準航路,入出港時刻の調整等について,安全性を検討し指導を行っている。


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