2 日本をめぐる問題
(1) 我が国と諸外国との航空交渉
(ア) 航空協定締結交渉
53年5月の新東京国際空港開港以来,我が国は各国との航空協定締結交渉を精力的に進めてきたが,56年6月にフィンランドとの航空協定が締結された結果,我が国と航空協定を締結している国は36か国となった。更に,我が国に対して,現在29か国から協定締結の申し入れがなされている。これらの申し入れに対しては,我が国は,両国間の政治,経済,文化等の交流関係,両国間の航空需要の見通し,相手国のハイジャック防止対策への配慮等の諸点を考慮しつつ対処していくこととしている。
(イ) 日米航空問題
日米航空協定は,日米間路線,以遠権,輸送力等の面でアメリカ側に有利なものとなっており,両国間の航空権益は著しく不均衡なものとなっている。その具体的な内容は,大要,次のとおりである。@相手国内乗り入れ地点については,アメリカ企業は,日米間航空需要のほとんどすべての輸送に参加し得るのに対し,日本企業は,アメリカ中西部,アメリカ西海岸の一部,南部等の重要市場に乗り入れ地点を有していない。A以遠権については,アメリカが日本以遠無制限の権利を有しているのに対し,日本はニューヨーク以遠欧州のほか,運輸権のない中南米の運航権しか与えられていない。B指定企業数については,協定上両国とも複数とされているが,日本側が1社であるのに対し,アメリカ側は6社を指定し,そのうち4社が乗り入れている。C輸送力については,現行協定下においては,第1次的には企業がその判断に基づいてこれを設定できることとなっており,上記のアメリカ企業の複数乗り入れと相まって,数多くの強大な企業を有するアメリカ側に有利となっている。
我が国は,こうした現行日米航空協定の日米間の不均衡を抜本的に是正するため,51年10月日米航空協定の改定交渉を開始したが,最終的な解決をみることなく,53年3月以来交渉は中断していた。53年9月,アメリカ側の申し入れにより,交渉再開の糸口をさぐるため両国政府間の非公式意見交換が東京で行われた。その後,56年1月ホノルルでの非公式協議を経て,日米航空交渉の再開が合意され,4月東京で再開第1回の公式協議,5月ワシントンで第2回公式協議が行われた。日本側の日米間不均衡是正の主張に対し,アメリカ側の主な主張は,@運賃の自由化,Aチャーターの自由化,B空港アクセスの確保である。5月のワシントンにおける交渉を通じ,日米双方の立場の違いはかなり狭まってきたが,輸送力,運賃等の問題に関する双方の主張にはなお相当の隔たりが認められ,最終合意に達することはできなかったが,その後も事務レベルでの非公式協議を通じ,双方で最終合意へ向けて努力を行っている。
(ウ) その他の航空交渉
上記のほか,既に航空協定を締結している国との間でも航空協定の付表で定めている路線の改定,両国の指定航空企業の運航便数,使用機材の変更等について,必要に応じて航空当局間での交渉を行っている。また,運賃問題についても当局間で協議を行うケースが増えてきている。最近の傾向としては,太平洋線に対する各国の航空企業の新規参入又は増便の希望が増加しており,このための交渉が多くなってきているが,彼我の利益が一致せず,同一国と数次にわたる交渉を行う場合も出てきている 〔III−29表〕。
(2) 我が国をめぐるチャーター輸送の現況
我が国発着のチャーター便は,55年において旅客,貨物合わせて約3,320便(片道ベース)である。その内訳は,日本企業によるもの約2,480便,外国企業によるもの約840便である。北大西洋や欧州地域内ではチャーター輸送の航空輸送全体に占める比率が大きいが,我が国ではその比率は小さい。これは,我が国が定期便を航空運送の基本とし,チャーター便は定期便による航空運送を補完するものであるとの基本的考え方をとってきているためである。
従来,我が国は,特定の個人又は法人がチャーター契約を締結し,チャーター料金の全額を負担するオウンユース(ownuse)チャーター及び特定の団体の会員にのみ認められるアフィニティ(affinity)チャーターしか認めてこなかったが,最近の海外旅行市場の特殊性(観光を目的とした団体旅行が多いこと)を考慮し,消費者の需要の高まりに対応して,53年11月以来,一般旅行業者が地上部分も含めた包括的旅行サービスの旅客を公募し,自ら用機者となって行う包括旅行(inclusivetour)チャーター(ITC)を試験的に導入してきた。その試行期間中の実績等にかんがみ,56年1月日本始発についてITCの導入を正式に認めた。外国始発のITCについては,ケースバイケースの判断に委ねることとされているが,可能な限り日本始発のITCに準じて取り扱うこととし,その導入の道を開いている。
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