2 貨物輸送
1981年の世界経済は,第2次石油危機後の混迷から依然として脱しきれず,停滞状況を続けた。世界貿易をみると,81年は,対前年比1.4%減(世界輸出,ドルベース)とマイナスに転じており,世界経済の低迷を裏付けている。
81年の世界の海上荷動き量は,トン数ベースで対前年比5.1%減の34億6,300万トン(推計値),トンマイルベースでは同6.2%減の15兆7,400億トンマイル(推計値)と,ともに前年水準を下回っており,80年(それぞれ2.8%減,5.1%減)に引き続いて2年連続の減少となった。これを品目別にみると,石油が世界景気の後退,省エネルギーの進展等により大幅な減少となったこと,石炭が代替エネルギーとしての需要等から根強い動きを示したことが注目される。なお,我が国輸出入貨物の世界の海上荷動き量(トンマイルベース)に占めるシェアは23.1%(このうち,鉄鉱石,石炭,原油についてはそれぞれ,50.8%,46.0%,15.0%となっている)と非常に高くなっている。一方,世界の航空輸送は,伸び率こそ鈍化しているものの,依然として増加を続けており,81年は,対前年比6.1%増の214億9,000万トンキロ(推計値)となった。
56年(度)の我が国をめぐる海運及び航空による国際貨物輸送活動をみると,その概況は次のとおりである。
まず,56年の外航海運による我が国の国際貨物輸送量(トン数ベース)は, 〔1−1−8表〕のとおり,輸出は対前年比1.1%増(55年回0.6%増)の微増に止まった。これを品目別にみると,鉄鋼が世界的な需要低迷等から対前年比3.9%の減少となったほか,前年に大幅増加となった乗用自動車の伸びが,貿易摩擦等の影響から1.9%に鈍化したことが目立っている。一方,電気製品,機械類などの加工型産業の品目は,依然として好調に推移しており,近年の動きをみても 〔1−1−9図〕のとおり,我が国の産業構造の変化をも反映して,乗用自動車,機械類,電気製品等のシェアが高まっている。地域別には, 〔1−1−10図〕のとおり,アジアのシェアが54年に比べて大きく低下している。また,中近東のシェアが徐々に高まっている。
輸入は対前年比6.3%減(55年回2.1%減)と減少幅を拡大した。これを品目別にみると,石油代替エネルギーとして需要が増加している石炭(対前年比14.8%増)を除くほとんどの品目で減少となっており,なかでも,国内需要の低迷,輸出の減少等により対前年比7.7%の減少となった鉄鉱石,住宅需要の落ち込み等から同23.1%の減少となった木材,石油節約の進展,国内需要の低迷等により同10.6%の減少となった原油の落ち込みが目立っている。地域別にみると,アジアのシェアが徐々に高まっているのに対して,中近東のシェアは最近の原油輸入量の減少の影響から54年に比べて大きく低下している。
我が国商船隊(外国用船を含む)の輸送活動をみると,輸出は,積取比率の高い乗用自動車の伸びが大幅に鈍化したため,全体では55年に比べその伸びが大幅に鈍化し,2.2%増の4,223万トンとなった。輸入は,前年に引き続く原油輸送量の大幅減等から同8.9%減の3億9,510万トンとなった。三国間も,6,796万トンで同11.6%の大幅減少となった。この結果,我が国商船隊の積取比率は,輸出が0.6ポイント増の54.6%,輸入が2.0ポイント減の69.6%となった。このうち,日本船の輸送量をみると,輸出は,対前年比5.8%の増加となったが,輸入は,同8.5%の大幅な減少となった。この結果,日本船の積取比率は,輸出が前年に比べて1.0ポイント増の21.5%と横ばい気味に推移しているのに対し,輸入は0.8ポイント減の36.6%と積取比率の低下基調が続いている。
次に,56年度の国際航空における我が国の貨物輸送量(トン数ベース)をみると,輸出は,対前年度比6.4%増(55年度同15.6%増)の29万9,000トンと前年度に比べ大幅に伸びが鈍化した。品目別(ドルベース)にみると, 〔1−1−11図〕のとおり,従来著しい伸びを示し航空貨物の伸びを支えていた時計,テープレコーダに代表される精密機械,電気機械工業製品が前年度に比べて減少となっていることが注目される。一方,輸入は27万2,000トンで対前年度比8.8%増(55年度同0.5%増)となった。このうち,我が国航空企業による輸送量をみると,輸出は対前年度比10.9%増(55年度同13.9%増),輸入は同17.3%増(55年度同4.2%増)であった。これにより,我が国航空企業による積取比率は,前年度に比べ輸出が1.4ポイント増の36.1%,輸入が3.1ポイント増の42.8%となった。
57年に入ってからの我が国の輸出入の動きをみると,世界景気の停滞等により,56年度後半から増勢が鈍化し始めた輸出は,57年に入ると減少に転じ,その後も減少傾向を続けている。品目別には機械類の落ち込みが目立っており,その影響もあって精密機械,電気機械等の輸送比率が高い航空貨物の減少傾向が続いている。一方,輸入は停滞気味に推移している。
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