3 運輸関係貿易外収支


  56年度の我が国の国際収支(IMF方式)は,経常収支が3年ぶりに黒字に転じた。これは,貿易外・移転収支の赤字幅拡大にもかかわらず,上期の輸出の堅調と,省エネルギー等による原粗油輸入量の減少,一次産品価格の下落などを主因とする輸入の低迷から,貿易収支が第2次石油危機前の53年度(205億ドルの黒字)並みの大幅黒字を計上したためである。一方,長期資本収支は大幅な内外金利差等の要因により大幅な流出超過となった。
  この結果,基礎収支は89億ドルの赤字,総合収支も79億ドルの赤字となった 〔1−1−12表〕

  次に,運輸関係貿易外収支(運輸収支と旅行収支の合計)をみると, 〔1−1−13図〕のとおり,54年度をピークに次第に赤字幅を縮小させており,56年度は72億ドルの赤字であった。項目別に前年度実績と比較してみると,貨物運賃が黒字幅を拡大し,貨物保険,港湾経費が赤字幅を縮小した一方,旅客運賃,用船料は赤字幅を拡大した。また,旅行収支は赤字幅を縮小させている。
  まず,海運収支は,赤字幅を縮小させている。これは,貨物運賃収支が,本邦船積取輸出貨物の好調,原燃料輸入の落ち込みを中心とする外国船積輸入運賃支払い額の減少等から黒字幅を大幅に拡大させたこと,港湾経費が,船用油価格の落ち着き等から赤字幅を縮小させたこと等による。なお,外国用船への依存は依然高く,用船料の赤字幅は大幅である。
  航空収支は,赤字幅を拡大させた。これは,旅行者の増加に伴って旅客運賃の支払いが増加し,旅客運賃収支の赤字幅が大幅に拡大したためである。
  旅行収支は,前年度に引き続き赤字幅を縮小させている。これは,韓国,台湾を中心とするアジア諸国からの入国外客数が大幅に増加し,旅行受取りが増加した一方,旅行支払いは,我が国からの出国者数が対前年度比4.8%増となったものの出国者1人当たりの消費額が1,121ドルと前年度の額より7.5%減少したため前年度実績を下回ったためである。


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