4 航空貨物輸送の進展


(1) 国際航空貨物の成長

  51年から55年にかけての対米貿易における航空貨物及び海運貨物の伸びは,金額(ドル)ベースで,輸出では,各々98.6%,94.7%増,輸入では,各々171.0%増,90.1%増と航空貨物の伸びが大きい。この結果,貿易全体に占める航空貨物の割合(航空化率)は, 〔1−6−41表〕のとおり,重量的には小さいものの,金額(ドル)ベースでは55年において,輸出10.6%,輸入18.4%と,51年と比較して各々0.2ポイント,4.7ポイント上昇している。
  対米貿易における航空貨物の主要品目別の動きをみると, 〔1−6−42図〕, 〔1−6−43図〕のとおり,輸出では,科学光学機器,電気機器,レコード,テープ,VTR等の音響機器,ガラス,陶磁器,真珠等の非金属製品やシェアは小さいものの自動車部品,医薬品の伸びが大きく,金額(ドル)ベースの航空化率(55年)は,科学光学機器では53.1%,電気機器では44.8%に達している。また,輸入では,事務用機器,科学光学機器,航空機部品,銀,白金等の非鉄金属やシェアは小さいものの魚介類,野菜・果物の伸びが大きい。金額(ドル)ベースの航空化率(55年)は,事務用機器93.9%,科学光学機器64.8%,電気機器85.8%に達している。単位重量当たりの商品価格と航空化率の関係をみると, 〔1−6−44図〕のとおり,商品単価が高くなるほど航空化率も高くなっているが,輪出では,印刷物,自動車,部品,織物等,輸入では,野菜・果物,おもちゃ・スポーツ用品,魚介類等比較的単価の安い商品の航空化率も高まっており,国際航空貨物の多様化が進んできている。

(2) 多様化する国内航空貨物

  国内航空貨物輸送量は,56年度36.9万トンとなり,51年度20.3万トンに対し1.8倍となっており,この間,国内貨物総輸送トン数の伸びが,1.17倍であるのに対して大きな伸びを示している。これを発着別地域別にみると, 〔1−6−45表〕のとおり,51年度を100として,56年度は,発貨物では,南九州316.9,沖縄287.7,名古屋222.2,北海道208.7,東北205.8,北九州200.8,着貨物では,北海道248.2,南九州201.9等の伸びが目立っている。また,51年度から56年度の地域間流動の伸びをみると, 〔1−6−46図〕のとおり,東京を中心とした発着貨物量は,東京-大阪が1割増にすぎないのに対して,東京-南九州,中国は3倍,東京-北海道,沖縄,北陸,北九州はいずれも2倍強の伸びを示しており,大阪を中心とした発着貨物量は,大阪-東北が4倍強,大阪-北海道,沖縄が3倍,大阪-南九州が2.4倍の伸びを示している。このように,航空貨物は,地方空港のジェット化,機材の大型化により,幹線よりもローカル線の伸びが目立つなど,量的増加のみならず地域的な広がりをもみせている。

  航空貨物の主要品目は,一般混載,生鮮混載,現金・手形類,書類,装身具・装飾品等となっており,比較的,小口,軽量の緊急品,高付加価値品が多いが,地方空港を中心としたICなど先端産業の発達とともに,機械器具・部品の伸びも大きく,また,最近では,生鮮野菜を中心に高額商品から一般商品に広がりをみせており,更に,商人間の貨物のみならず,一般個人の貨物も航空貨物として運ばれるなど,航空貨物の多様化が進んでいる。
  航空貨物輸送の成長は,第1に,我が国産業構造における加工型産業の成長により,航空輸送に適する高付加価値商品の進出が著しかったこと,第2に,消費生活の高度化,多様化により,空輸商品を受け入れるようになったこと,第3に,ジェット化,大型化により輸送効率の向上が図られたことのほか輸送事業者サイドにおける積極的な需要開発もあり,荷主サイドにおいて,単に運賃比較だけではなく,在庫費用,金利負担,保険,梱包費,市場への迅速な対応等すべての流通費用を比較して航空輸送を選択するという考え方の浸透により,潜在的な需要が顕在化した面によるところが大きい。
  しかしながら,航空貨物輸送を制約する要因として,まず航空貨物輸送に対する荷主の需要は,市場対応の必要性から,前日の夕方までの集荷-夕方以降の航空便による輸送-早朝配達に集中しているが,夜間便の運行には環境問題の制約があること,また,貨物量の多い東京,大阪の両空港に容量の制約があるといった問題がある。今後は,昼間閑散時の航空便の活用を図るなど,これらの問題を解決することが必要となってこよう。


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