1 臨調答申


(1) 答申に至る経緯

  55年度末に設置された臨時行政調査会においては,国の機構,制度及び施策の全般に関する幅広い調査審議が行われているが,緊急提言を内容とした2次にわたる答申の後,57年7月30日には,中長期的展望に立って行政の在るべき姿,今後の行政改革の基本的な方策を提示するものとして第3次答申(以下「臨調答申」という)が出された。臨調答申においては,行政施策,行政組織,公社・特殊法人等に関する行政改革の諸施策が提言されたが,わけても国鉄再建については,この問題に対する世論の高揚を背景として,緊急に着手すべき国家的課題とされている。

(2) 臨調答申の概要

  臨調答申は,国鉄については,その経営状況が危機的状況を通り越して破産状況にあるとの認識の下に,公社制度を抜本的に改め責任ある効率的な経営を行いうる仕組みを早急に導入するため,その分割・民営化が必要であるとの方針を打ち出している。臨調答申の示す国鉄の改革方策の概要は次のとおりである。

 ア 緊急措置

      新しい経営形態を導入するまでの間も国鉄の破綻は深刻の度を増すことから,赤字の増大を食い止め,借入金の増加を抑制するため,職場規律の確立,新規採用の原則停止,設備投資の抑制,地方交通線の整理の促進等の措置を緊急に講ずる必要がある。

 イ 経営形態の変更

      効率的経営を行うためには,現在の巨大組織では管理の限界を超えていること,また,国鉄再建のためには,経営者が経営責任を自覚し,それにふさわしい経営権限を確保するとともに,職場規律の確立や生産性の向上が必要であることから,次のように国鉄を分割・民営化する。
      @ 国鉄を7ブロック程度に分割する(具体的には国鉄再建監理委員会が立案する)。A 各分割地域内においては,自動車,船舶,工場,病院等について極力分離等を図り,地方交通線については私鉄への譲渡を図る。B 分割は,答申後5年以内に速やかに実施する。各分割体は当初は国鉄現物出資の特殊会社とし,将来逐次持株を公開し民営化を図る。

 ウ 新形態移行に際して解決すべき諸問題

      @ 長期債務;国鉄の長期債務を分割会社にすべて承継させると健全経営の目途が立たないことから,長期債務は分割会社の合理化施策と採算性を検討した上で一定の範囲内で承継させる。分割会社が承継するもの以外の長期債務は国鉄に残置し,元利払いは国が国鉄に補てんすること等により行う。
      A 国鉄共済年金;国鉄共済年金は,このままでは60年度において単年度収支が赤字に転化し,62年度には積立金もなくなる。このため,類似共済制度との統合を早急に図る。
      B 大規模プロジェクト;進行中の大規模プロジェクト(青函トンネル,本州四国連絡鉄道)については,完成時点において分割会社(国鉄)の経営を圧迫しないよう国は措置する。

 エ 改革の推進体制及び手順

 (ア) 推進体制

      国鉄の事業の分割・民営化による再建を図るため,内閣に「国鉄再建関係閣僚会議」を,総理府に「国鉄再建監理委員会」を設置し,強力な実行推進体制を整備する。また,国鉄の執行体制を強化する。
      国鉄再建監理委員会の任務及び権限は,分割・民営化のための再建基本計画の企画,審議及び決定,基本計画に基づき国鉄が作成する具体的再建計画の審査及び決定等とする。

 (イ) 手順

      @政府は,緊急事態宣言,緊急に措置すべき事項の決定等を行う。
      A国鉄は,緊急に措置すべき事項を織り込み,現行経営改善計画を改正する。
      B政府は,新形態移行のための計画を策定するとともに,所要の立法措置及び予算措置を講じ,国鉄を新形態に移行させる。


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