3 経営の近代化,合理化
国鉄の経費に占める人件費の比率は高いものとなっており,国鉄経営の改善のためには経営の近代化,合理化による業務能率の向上を図り,要員縮減に努めることが緊要な課題である。
国鉄は,これまでも,経営の近代化,合理化を緊要かつ最大の課題として取り組み,経営改善計画による56年度末における要員縮減累計数は2万7,500人となった。
しかしながら,貨物輸送における53年10月及び55年10月のダイヤ改正,旅客輸送における55年10月のダイヤ改正において,設定列車キロの削減等を行ったものの,これに伴うべき輸送の近代化,作業体制の見直し,簡素化等への取組が不足していたこと及びこの間の貨物輸送量が予想以上に減少したことから,要員縮減に見合う十分な能率向上効果はみられなかった。
従来の経営の近代化,合理化施策上の問題点を各部門ごとにみると,まず,駅部門については,従来から業務委託化,停留所化及び貨物取扱駅の統廃合を進めており,45年度以降,駅員配置駅では約750駅,貨物取扱駅では約1,700駅の縮減を行ったが,これらは必ずしも要員合理化につながらない場合があり,この間,駅関係要員そのものに大きな減少はみられなかった。
列車乗務員(車掌,列車掛)については,車内業務の集中する区間には特別改札要員を配置するなどして基本的な乗組数の縮減を図ってきたものの,これまで列車キロに対応した増加傾向が続いてきた。また,動力車乗務員についても,これまで1人乗務化を進め,乗務能率向上に努めてきたが,更に乗務行路,運用の組替え等により実乗務時間の向上を図る余地がある。
検修,保守部門(運転,施設,電気,工場)については,これまで組織の改変,機械化の推進,部外能力の活用等を図ってきたところであるが,各系統間での要員の機敏な適正配置が困難であったことから,これら近代化施策も職員の仕事の質を変えるに止まり,職員数の縮減には十分反映していない。
管理部門については,従来より,業務執行体制の見直し,局,課,室の統廃合を行ってきたが,今後一層その効率化,簡素化を図ることが必要である。
このような情況にかんがみ,経営改善計画における収支改善の目標を達成するため,今後の輸送需要の動向とこれに対応する部門別業務体制のあり方をも十分見極めるとともに,民鉄等における手法を参考としつつ,業務実態に対応した要員の適正配置や需要に即応した要員の弾力的運用等による業務運営の能率向上を一層積極的に推進することとしている。また,これらの施策によって今後とも徹底した近代化,合理化を図ることと併せ,近年1万人を超える規模で行ってきた職員の新規採用を原則停止する等の厳しい措置をとることにより,極力要員数を縮減することとしている。
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