6 年金対策


  国鉄共済組合の年金財政は,51年度に単年度収支が赤字に転じて以来赤字基調に推移しており,60年度以降は年金支給も危ぶまれるという極めて切迫した状況になっている。これは,職員数の減少や職員の年齢構成の歪みにより共済組合加入者に対する年金受給者の比率(成熟度)が高度化した(56年度末において81.2%)こと等によるものであるが,このような年金財政の状況は,将来の年金受給に対する不安感を醸成し,職員の勤労意欲を阻害する原因ともなるおそれがある 〔2−1−19図〕, 〔2−1−20図〕

  今後における国鉄共済年金対策については,共済年金制度の基本的諸問題について検討を行ってきた「共済年金制度基本問題研究会(今井一男座長)」が57年7月14日大蔵大臣に提出した「意見」において,「国鉄共済年金を崩壊させることは他の公的年金制度への信頼を瓦解させることになるから,何らかの対策を講ずべきだ」とした上で,国鉄共済単独での対応には限りがあり,また,国庫負担への依存も適当ではなく,厚生年金への移行についても複雑かつ困難な問題があること等から当面の緊急措置として「国家公務員と公企体職員の両共済年金の合併」措置を講ずべきことを提言している。また,この問題に関連して臨調答申においても概ねこれと同旨の指摘がなされている。
  このような状況を踏まえ,政府としては,当面,公的年金制度全体の再編・統合の第一段階として国家公務員共済組合と公共企業体職員等共済組合の年金制度の統合を図るための立法措置を講じていくことにしており,目下,このための関係者間の協議調整が進められている段階にある。
  なお,このような国鉄共済組合の年金財政の悪化の問題のほか,国鉄の年金負担額の大半を占める追加費用(法律により国鉄が事業主として負担することとされている現行共済組合制度前の期間に対応する給付に要する費用)の負担が国鉄経営の圧迫要因となっている問題がある。56年度において2,996億円の多額に上っている追加費用の負担は,今後も年金受給者の増加に伴って引き続き増大し,国鉄の経営を一層圧迫することになると予想される。この問題については,長期債務や退職金等の構造的問題への対応とあわせ具体的検討を行い,所要の措置を講じていく必要がある。


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