II-(V)-7 航路標識の現状と整備


  船舶が安全かつ経済的な針路をとって航行するためには,常に自船の位置と目的地との位置関係や障害物を確認することが必要であり,航路標識は,その指標として船舶にとって必要不可欠なものである。
  航路標識は,光,形象,彩色により指標となる灯台,灯標等の光波標識,電波により指標となるオメガ局,デッカ局,ビーコン局等の電波標識,音響により指標となる霧信号所の音波標識,光,形象,電波の組合せにより指標となる潮流信号所に大別される。
  港湾や航路の整備の進展,船舶交通のふくそう化,船舶の大型化・高速化による海上交通の態様の変化等に伴い,航路標識はサービス内容の多様化や標識機能及び信頼度の向上が要求されてきている。
  このため,それぞれの海域における特殊性を勘案し,隣接の各種航路標識との相互補完関係にも配慮しつつ,必要な機能を具備した航路標識を計画的に整備している。

  56年度には,灯台30,立標7,マイクロ波標識局5,デッカ局3,照射灯3,指向灯2,灯浮標2,灯標2,合計54の航路標識を新設した。また,船舶のふくそうする東京湾においては,東京湾海上交通情報機構整備の一環として,北部海域をカバーするため千葉県浦安町にレーダー局を整備した。

  デッカシステムは,長波を使用する中・近距離用航行援助システムで,測定精度が高く,測定のための受信機の操作が簡単で,かつ,連続測定ができるなどの利点を有しているため,船舶交通がふくそうしている海域において極めて有効なシステムである。
  このため,海上保安庁は,我が国の周辺海域をデッカチェーン網でカバーすることとし,北海道,北九州,東北,関東及び四国の各チェーンを既に運用しており,引き続き56年度には北陸デッカチェーンの整備に着手した。


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