3 海象


  北西太平洋の海面水温は,日本近海を中心に,ほぼ年間を通じて平年より低めに経過した。特に,本州東方の海面水温は,親潮が2月から8月にかけて,例年になく南まで張り出したこともあり,平年を2〜3℃下回った月が多く,6月には,常磐沖で観測史上例のない-5℃近い平年偏差がみられた。このような低水温は,折りからの北日本の冷夏を大きく助長した。一方,海面水温が平年より2℃以上高かったのは,8月及び9月の三陸,北海道の遥か東方海域のみであった。北東太平洋においても海面の低水温が自立ち,北緯35度から50度,西経140度から180度付近では,しばしば平年に比べて2℃以上低めに経過した。
  黒潮は,遠州灘以東で前年度後半から夏季にかけて小規模な蛇行の発生,消滅を繰り返していた。11月以降,御前崎沖にかなり大規模な冷水塊が定着し,黒潮の流れは,その南側を迂回するいわゆる大蛇行流路に変わった。また,本州東方での黒潮の北限は平年に比べて,やや南の北緯36度付近に止まった。
  日本沿岸の月平均潮位は,1年を通じてほぼ平年並みか,やや低め(10センチメートル未満)であった。8月23日には,台風第15号により関東以北の太平洋沿岸で,やや大きな高潮が発生し,小名浜で最大偏差74センチメートル等,これまでの記録を更新した。10月22日から23日にかけて本州南岸を通過した台風第24号により,岡田(伊豆大鳥)で最大偏差59センチメートルと過去の最大を記録したほか,各地でやや大きな高潮がみられた。また,低気圧の通過に伴って海面に異常な昇降が発生し,57年3月5日から6日にかけて長崎港で全振幅133センチメートルを,3月19日に枕崎港で全振幅124センチメートルを観測した。
  北海道のオホーツク海沿津への流氷の到来は,平年より10日遅い57年1月下旬であった。オホーツク海の海氷域は3月半ばに最も広くなったが,その面積はほぼ平年並みであった。油津の流氷の終日は稚内,枝幸,根室で3月の終り近く,雄武,紋別,網走で4月半ばと,平年に比べて早い所,遅い所,まちまちであったが,稚内で平年より21日も遅れたことが目立った。全体として沿岸における流氷の勢力は弱かった。
  オホーツク海から太平洋側への流氷の流出は,珸瑶i水道で2月中ごろ,国後水道で4月初めまでみられた。日本海北部の海氷の広がりは平年に比べて劣勢であった。


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