2 ニューメディア等をめぐる動向
(1) 付加価値通信(VAN)サービスへの運輸事業者の進出
(望まれるVANの整備)
57年に公衆電気通信法に基づく郵政省令の制定によりいわゆる中小企業VAN制度が創設され,中小企業等の特定グループに対する付加価値通信サービスの民間企業による提供が可能となった。付加価値通信サービスとは,プロトコル(通信規約)の変換,同報通信(多数の送り先へ同時に送信すること)等のサービスを行うものでありこれまで数社がこのサービスを開始しているが,運輸事業者関係では大手路線トラック事業者等2社がこの業務を行っている。これらの事業者は,全国的なオンラインネットワークを形成していたこと,荷主や系列会社とオンラインによる情報交換を行っていたことなどにより,参入が容易であったと考えられる。
付加価値通信サービスを利用することにより輸送伝票の交換,荷動きの把握をはじめ配車や台数管理等の業務が効率的に行われ,物流情報の交換が推進されることとなる。このように付加価値通信サービスは情報の伝達に対し大きな威力を発揮し物流の効率化に資するものであり,今後ますます重要な役割を果たしていくと思われる。
(2) 運輸事業者のニューメディアへの取組み
ア 旅行業者のニューメディアへの取組み
(高まる観光情報への需要)
国民生活において観光旅行の占める割合は依然として増大しているが,最近の傾向として旅行者が自らの好みに応じて計画し,選択する旅行も多くなりつつある。したがって,多様な観光情報に対する需要は,今後ますます高まっていくことが予想される。
このため,旅行業者のニューメディアに対する関心も高く,ビデオテックス(キャプテンシステム)の実験に参加している業者もある。この実験では,海外パッケージ旅行の紹介,旅行地情報の提供等が行われている。
こうした動きを受けて,運輸省としてはニューメディアに対する旅行業界の対応,旅行業界を取り巻く環境の変化等を十分把握しつつ,消費者保護等の観点から適切な指導を行うための検討を進めることとしている。
イ 鉄道事業者のCATV事業への取組み
(沿線の発展の一助に)
57年頃より,大手私鉄の都市型CATV事業への進出の動きが表面化している。各社は,関連ホテル間,関連施設間及び各鉄道沿線での都市型CATV事業の展開に向けて,具体的な検討を進めている。
鉄道事業者がCATV事業に進出する背景としては,鉄道事業にとって,沿線開発によって地域社会の繁栄を図ることは輸送人員の増加につながること,鉄道の線路空間を利用すればCATV用ケーブルの敷設が容易に行えることなどが考えられる。このCATVの運用により,催し物情報,生活関連情報,各種の娯楽情報など地域に密着した総合的な情報の提供が可能となり,沿線の発展が期待される。
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