4 国際協調の推進と総合安全保障


  (運政審が「総合安全保障に係る運輸政策のあり方」について報告)
  発展途上国等に対する経済協力や諸外国との人的交流を推進することは,我が国の総合安全保障の視点からも重要な意義を有する。
  すなわち,経済面において対外依存度の高い我が国の安全保障にとって,国際的要因に基づく脅威の発生を未然に防止するため,国際環境を安定化することが極めて重要であり,この観点から,友好協調関係の維持,増進,相互依存関係の深化によって諸外国との国際関係を安定化し,また,我が国の国際的地位にふさわしい役割を果たしつつ,国際社会の安定化に努力することが必要である。
  58年2月に運輸大臣に提出された運輸政策審議会報告「総合安全保障に係る運輸政策のあり方」においても,同様の指摘がなされ,国際協調の推進は,我が国の総合安全保障の根幹として位置付けられている。
  この報告は,運輸政策が我が国の総合安全保障にどのような貢献をなしうるかという観点から総合安全保障の基本的考え方を整理するとともに,それに係る運輸政策の課題と施策の方向を明らかにしたものである。
  報告は,まず,総合安全保障の基本的考え方について,我が国の安全を確保するためには,独立した国としての存立を軍事的脅威から守ることと並んで経済活動や国民生活を様々な脅威から守ることが必要であり,また,これらの脅威に対処するに当たって,その予防から発生に至るまでの各λの段階において広い視点から諸施策を講ずることが必要であると述べている。次に総合安全保障に係る運輸政策の重要課題として,@国際協調の推進A輸出入物資の安定輸送の確保B大規模災害発生時の輸送の確保の3点を指摘し,国際協調の推進を図るため,運輸部門における国際協力の推進や国際交流の促進等に一層努力していくことが必要であること,輸出入物資の輸送を安定的に確保するため,海上輸送力の確保や通航依存度の高い重要海峡等の通航確保等が必要であること,また,大規模災害の発生に際して輸送を確保するため交通輸送システムの体質強化等が必要であることを提言している。
  今後,運輸行政は,国全体としての総合安全保障論議を踏まえつつ,報告の趣旨を政策に反映させ,我が国の総合安全保障に貢献していくことを強く期待されている。


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