1 増大する航空需要(経済成長に伴い航空輸送量は著増) 昭和26年に再開された我が国民間航空は,同年の日本航空の設立,翌年の東京飛行場の返還等を機に徐々にその活動が再開されれ,「航空法」(27年),「空港整備法」(31年)といった基本的な航空法制の制定とあいまって,以後今日に至るまで急激な発展を遂げてきている。 航空の需要の増大にもめざましいものがあり,37年度の国内線航空旅客輸送人員295万人に対し57年度は4,048万人と約13.7倍に,また,国際線航空旅客輸送人員についても68万人から1,416万人と約20.9倍に急増しており,今や航空輸送は市民生活に不可欠な輸送機関としてすっかり定着するに至っている。また,貨物輸送の分野でも,輸送量全体に占めるシェアは未だ小さいものの,国内線についてはこの20年間に約26.1倍に,国際線については実に約41.8倍になる等航空輸送に適合する高付加価値製品,生鮮食料品等を中心として輸送量が著しく増大し,順調な伸びを続けている。 その背景としては,経済の高度成長に伴い産業活動が活発化するとともに,国民の所得水準も向上し,時間価値が急速な高まりをみせたことが,時間短縮効果が大きく,快適性にも優れる航空輸送の特性に合致したことに加え,この間の国内線ジェット機就航(36年),同ジャンボジェット機就航(47年)等に代表される一層の高速化・大型化の進展等により生産性が飛躍的に向上し,実質コスト,ひいては実質航空運賃が大幅に低下してきたことが考えられる。 (中長期的には着実な増大) しかしながら,安定経済成長の時代に入った今日,国内線を中心として航空需要は伸び悩みないし低迷の傾向がみられるようになり,55年度に14年ぶりの減少を記録した国内線航空旅客需要は,56年度にはいったん回復をみせたものの,57年度に再びマイナス成長に見舞われることとなった。 これは,引き続く景気の低迷,55年3月及び57年1月の航空運賃改定,57年2月の日航機羽田沖事故等の航空機事故の続発等の短期的要因が影響した面もあり,今後の航空需要については,従来のような急激な増大は疑問視されるものの,中長期的には,国内線については遠距離路線,海越え山越え路線等航空特性を十分に発揮できる分野を中心として,また,国際線については今後一層進展すると見込まれる政治,経済,文化面の国際化を背景として,着実に増大していくものと考えられる 〔2−2−1表〕。
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