1 概況


(1) 貿易摩擦と市場開放問題

  (深刻化する貿易摩擦)
  我が国と欧米諸国間の貿易摩擦は,世界経済の低迷,輸出入のインバランスを背景として,ますます深刻化の度合を強めている。特に最近においては,欧米諸国は,我が国に対し,単に輸入の拡大や輸出の抑制を求めるだけでなく,我が国の市場が閉鎖的であるとして,その開放を求め,あるいは我が国の経済体質そのものを問題視するような態度をみせている。
  現下の対欧米貿易不均衡は,商品の品質,価格等の競争力の差等に由来するものであるが,諸外国が保護貿易主義的な傾向を強めつつある現状にかんがみ,我が国としては,自由貿易体制を堅持し,貿易の拡大均衡による世界経済の発展を図るため,市場開放等の措置を積極的に進める必要がある。
  (市場開放対策の推進)
  政府においては,昭和56年12月の対外経済対策に関する経済対策閣僚会議決定以来,輸入検査手続き等の改善,市場開放問題苦情処理体制の充実,関税率の引下げ,輸入制限の緩和その他の市場開放対策を進めてきたところであり,特に,58年3月には,基準・認証制度等連絡調整本部において,認証手続における内外無差別の法制度的確保,規格・基準作成過程における透明性の確保,規格・基準の国際化の推進等の措置を講ずることを決定した。
  運輸省としては,このような政府の方針に沿って,市場開放問題苦情処理体制の整備を図るとともに,自動車に係る基準・認証制度の抜本的な改善を行うなどの措置を講じてきたところである。

(2) 市場開放問題苦情処理体制(O.T.O.)の整備政府においては,57年1月の経済対策閣僚会議において,輸入検査手続等の市場開放問題に関する苦情について,その迅速かつ的確な処理を図るため,内閣官房副長官を本部長とする市場開放問題苦情処理推進本部を設置した。運輸省においても,大臣官房政策課を苦情受付窓口として苦情処理に当たってきたが,58年1月,その処理体制の一層の充実を図るため,大臣官房に市場開放問題対策室を置くとともに,地方海運局(海運監理部を含む。)及び陸運局にO.T.O.担当者を置くこととした。

  運輸省においてこれまでに処理した苦情は,全部で5件であり,道路運送車両法関係2件(輸入自動車の検査に関するもの),船舶安全法関係1件(水上モーター・バイクの検査に関するもの),石油パイプライン事業法関係1件(航空燃料パイプラインの使用料に関するもの)などである。


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