1 海洋開発の意義


  四面を海に囲まれた我が国は,埋立等により新たな国土を海洋に展開することによって流通,生産,都市活動等の場を確保し,また,海洋を海上交通,水産業,レクリエーション等の場として活用し経済社会の発展及び国民生活の安定を図ってきている。
  広大な海洋の中で,特に沿岸海域は国民生活に密接に結びついた空間であり,海洋構造物や人工島等による新たな形態での海洋空間の利用が着実な歩みを見せはじめており,多様な活動の展開の場としての沿岸海域の有効な活用に期待が高まっている。
  また,昭和57年に採択された「海洋法に関する国際連合条約」の規定によれば200海里排他的経済水域及び大陸棚を含む広大な海域において主権的権利を主張することができることとなっており,我が国にとって,この新しい海洋秩序に対応した海洋空間の利用及び海洋に賦存する各種の資源の開発・利用は緊急の課題となっている。特に近年では海洋は鉱物資源の宝庫でもあるという点に関心が強まり,既に開発の進んでいる海底石油・石炭に加え,マンガン団塊や熱水鉱床など新たな海底鉱物資源が注目を浴びており,その開発の促進が要請されている。
  なお,海洋の開発・利用は環境の保全と一体となって推進されるべきものであり,この点を踏まえ,海洋の開発・利用を推進していくことが必要である。
  運輸省では,従来から港湾,航路,海岸,海上空港等の整備・管理,海上交通の安全確保,海洋環境の監視・改善,海象,気象,海底地形等の調査及びこれらの情報の管理・提供あるいは海洋土木技術,造船技術の開発を通じて,海洋の開発・利用に係る行政を多面的に展開し,海洋開発の推進に大きく貢献してきているが,以上のような海洋の開発・利用の必要性に対応し,各種の施策を一層推進していくことにより,今後とも我が国の海洋開発における重要な役割を果たしていくこととしている。


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